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社会人野球の“ステップ”もアリ!?
宮台康平に勧めたい険しい我慢の道。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2017/10/25 17:15

社会人野球の“ステップ”もアリ!?宮台康平に勧めたい険しい我慢の道。<Number Web> photograph by Kyodo News

プロ入りすれば東大からは6人目となる宮台康平。運命のドラフトの日は近づいている。

球速は140台後半だが、乱れも見える!?

 立ち上がり、宮台康平の球筋が微妙に乱れる。

 明治大の1番・竹村春樹遊撃手(4年・浦和学院)、見送り三振の145キロは逆球。2番・河野祐斗二塁手(4年・鳴門)には2ボールから高目の棒球を左中間最深部に持っていかれる。3番・渡辺佳明三塁手(3年・横浜)に、フルカウントから楽々レフト前にライナーで落とされた外角速球は146キロ。

 力を入れて投げたボールほど乱れが見えていた。

 3回に先取点は取ってもらっても、その裏にすぐ同点にされて、4-1と突き放したかに見えた5回にも、その裏、連続四球のあとの初球144キロを渡辺に再びレフト前に、今度は会心のスイングでライナーを弾き返され、4番・逢沢崚介中堅手(3年・明治大)には右中間最深部へあわやフェンス越えの二塁打にされて、再度同点にされた。

 コンスタントに140キロ前半を投げ続けられるわりに、その速球に輝きが見えない。

 2年の秋、あんなに空振りを奪っていた速球で空振りがとれない。打者が簡単にタイミングを合わせている。投げ合っている明治大の左腕・齊藤大将(4年・桐蔭学園)の130キロ後半のほうが、ずっと強く、速く、打者が差し込まれている。

素晴らしい素質を持ったサウスポー。

 ピッチングが上手いから、スライダーとチェンジアップで打者をはぐらかしながら、なんとかアウトを重ねていくが、学生投手だからこそあふれていてほしい若さとか、ハツラツさとか、そういったエネルギッシュな熱さが伝わってこないのはなぜか。

 一塁けん制のボールに強さがないのは、肩のパワーが以前よりしぼんでいるからか。フィニッシュに以前より“瞬発”を感じないのは、最後の最後で縫い目に指をグイとかけてボールを投げ込む気迫がちょっとおくびょうになっているからなのか。

 この試合、5点奪われながら完投した宮台康平は、翌日の2回戦でも6回からリリーフし、立ち上がりの2失点で踏みとどまって4イニングを投げ通し、学生野球の幕を閉じた。

 肩が元気な時の快速球、クロスファイアーは東京六大学のスラッガーたちをはっきりやっつけていた。緩急で打者のタイミングを外す投手の仕事を、きっちりやってのける技術もセンスも持ち合わせている。

 宮台康平がすばらしい素質を持ったサウスポーであることは間違いない。

 しかし、今がプロ入りのタイミングではない。

【次ページ】 社会人野球で“ステップ”を踏むのもアリでは?

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