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日本一へ「やられたままはイヤ」。
千賀滉大、タイトルより登板の信念。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2017/10/13 07:00

日本一へ「やられたままはイヤ」。千賀滉大、タイトルより登板の信念。<Number Web> photograph by Kyodo News

千賀(中央)の最終登板で、サヨナラ勝ちを果たしたホークス。ポストシーズンでもその強さを発揮できるか。

9回裏2アウト、上林の一打で負けが消えた。

 かくして一か八かで臨んだ今季最終登板はビハインドのまま降板をしたが、その後に劇的な試合展開が待っていた。

 1点差まで迫り、迎えた9回裏。2アウトながら走者は二塁。ここで上林誠知がライトへ同点のタイムリーを放って、千賀の黒星を消した。

 この瞬間、勝率1位タイトルが確定したのだった。

 白球は相手外野手が差し出したグラブのわずか前方に弾んだ。まさに紙一重で、よりダグアウトの興奮度は増した。千賀はみんなに頭を下げて回り、グラウンドではほとんど見せない満面の笑みを浮かべていた。

「感謝の気持ちでいっぱい。ただ、嬉しかったというより、なんか不思議な感じでした。正直、もう難しいかなと思っていたので」

「自分の中で掴めそうだなと感じた部分もあった」

 そして、この日で2年連続での規定投球回数もクリアした。

 タイトルホルダーとなった価値は、千賀はまだ知らないだろう。

 和田は千賀にこのような言葉を掛けていた。

「表彰式に行ったらすごく実感が出る。そうしたら次もこのタイトル、いや次はあのタイトルをという欲が出てくるよ。オフのいい刺激になって、練習のモチベーションも全然違ってくる。次の野球人生に繋がるから」

 また、肝心のCSへの調整は、6回3失点の投球ながら光が見えたという。特に序盤の3イニングは計6奪三振。うち5つは宝刀お化けフォークで奪ってみせた。いつものキレと角度でボールが落ちた。直球も常時150km台をマークした。

「自分の中で掴めそうだなと感じた部分もあった。しっかりコンディションを整えて、ケアもして臨みたい」

 試合後には“ライバル”の東浜からも「おめでとう」と祝福された。チームのみんなへの恩返し。それは、日本一奪回へと導くポストシーズンでの快投で示すしかない。

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