Sports Graphic Number WebBACK NUMBER

<BE ADAPTABLE!>
内村航平「どんな戦いでも、同じ感覚で無理にでもやってみせる」

posted2017/10/05 17:00

 
<BE ADAPTABLE!>内村航平「どんな戦いでも、同じ感覚で無理にでもやってみせる」<Number Web> photograph by ASICS

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph by

ASICS

 20歳で出た'09年体操世界選手権で初めて頂点に立ってから8年。日本が世界に誇る“キング・オブ・ジムナスト”内村航平(リンガーハット)は、つねに体操界のド真ん中を歩み続け、つねにトップに立ってきた。男子個人総合ではロンドン五輪とリオデジャネイロ五輪を含めて8連勝。世界選手権は6連覇していた。

 7連覇を目指した今年の世界選手権は、予選の跳馬の着地で左足首外側のじん帯を断裂するアクシデントに見舞われたことで途中棄権を余儀なくされ、思わぬ形で連覇はストップした。けれども内村が達成してきた偉業が色あせることはない。

 これまでの8年間に次々と新しい選手が登場し、世界中の強豪が「打倒ウチムラ」を目指す中、彼が勝ち続けてこられたのはなぜか。世界中の新鋭たちが「あこがれはコウヘイさん」と目を輝かせる存在であり続けるのはなぜか。

 答えのひとつとなるのは、たぐいまれなる適応力があるということだ。

世界選手権では大会ごとに器具メーカーが変わる。

 まずはルールへの対応力だ。体操では五輪を区切りに4年に1度ずつ採点規則が変わり、選手は五輪が終わるごとに新ルールへの対応に追われる。内村がここで重要であると考えているのは、「採点規則を十分に理解して、なるべく減点項目の少ない技で演技を構成すること」。

 まずはルールを正確に把握し、頭の中でしっかりとかみ砕き、ルールに合った技を選んで全体の構成をつくりあげていく。そして、長年のたゆまぬ鍛錬によって手に入れてきた数多くの引き出しの中から、ルールに合った技を取り出し、完璧なコーディネートにまとめ上げるのだ。

 器具への対応力も重要だ。体操器具の主要メーカーは世界に5、6社あり、世界選手権では大会ごとに使用するメーカーが変わる。形状が微妙に違えば、手触りや跳ね返り具合も違う。だからといって演技の正確さがその都度違っていては、チャンピオンにはなれない。

 ここで内村がすごいのは、器具が変わったことをまったく感じさせない演技を見せることだ。

「たとえ器具が変わってもやる内容は同じですからね。多少無理矢理でも、なるべく同じ感覚でやることです」

 いかにも“力技”的な言い回しだが、実際は器具の違いを見極める繊細なセンスがあるからこそできるのだろう。

【次ページ】 「適応力」の名を冠した愛用のウエア。

<< BACK 1 2 NEXT >>
1/2ページ
関連キーワード
内村航平

ページトップ