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イチローと代打の宝石たち。
大リーグで輝いた勝負師の数々。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2017/09/16 09:00

イチローと代打の宝石たち。大リーグで輝いた勝負師の数々。<Number Web> photograph by AFLO

ウェイティングサークルでも準備を欠かさない。この完璧な準備が、代打としてもイチローの価値を高める。

中日にも在籍したステアーズは23本の本塁打。

 代打通算本塁打数の記録保持者は.マット・ステアーズ('92~'11)だ。'93年に中日ドラゴンズで60試合に出場したステアーズは、大リーグ12球団を転々としながら23本の代打本塁打を記録した。フィリーズ時代の'08年には、40歳の高齢ながらNLCS第4戦(対ドジャース戦)で、勝利を呼び込む代打本塁打を右翼席に放っている。

 ハリスやステアーズは記憶に新しいが、かつては代打の帝王といえばマニー・モタ('62~'82)だった。現在でこそハリスやマーク・スウィーニー('95~'08。175安打)に破られているものの、彼の残した代打通算150安打は、20年の長きにわたって不滅の大記録だった。20年間の通算打率が3割4厘(3779打数/1149安打)で、代打の通算打率も3割4厘(494打数/150安打)。数字を見れば、その勝負強さが理解できる。

 勝負強さといえば、スモーキー・バージェス('49~'67)の名も忘れられない。強打の捕手としてオールスターに6回出場した彼は、代打に転じてからもいぶし銀の活躍を見せ、65年には年間24打点を記録する。通算打点も、代打だけで146(生涯通算は673打点)。こちらは堂々たる大リーグ記録だ。

代打満塁ホームランを3度も放った名選手も。

 殿堂入りした大選手のなかにも、代打で活躍した人がいる。代表格はウィリー・マッコヴィー('59~'80)だろう。マッコヴィーは本塁打王3回(通算521本塁打)、打点王2回の強打者だが、代打としても16本の本塁打を放っている。しかも、満塁弾が3度('60年、'65年、'75年)。これはベン・ブルーサード('02~'08)、リッチ・リース('64~'73)、ロン・ノーシー('42~'57)と並ぶ大リーグ記録だ。

 戦前の名遊撃手ジョー・クローニン('26~'45)も、晩年は代打で光った。通算安打数2285、通算打率3割1厘という数字は殿堂入りにふさわしいが、36歳の'43年には、代打として年間25打点を記録した。これまた、'61年のジェリー・リンチ('54~'66)や'83年のラスティ・スタウブ('63~'85)と並ぶ大リーグ記録である。

【次ページ】 忍耐力、観察力、瞬発力、継続力の証明。

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