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ハリルはいかに時差を乗り越えたか。
「寝ない」という原始的な対策方法。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2017/09/12 11:30

ハリルはいかに時差を乗り越えたか。「寝ない」という原始的な対策方法。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

海外組という言葉もめっきり聞かなくなったが、彼らの移動距離は全く減っていない。アスリートにとって時差は死活問題なのだ。

医療機器などを経てたどり着いた結論は……。

 8月18日付のスポーツ報知に興味深い記事が載っていた。見出しは「ハリル監督 寝るな指令」。記事を抜粋させていただく。

「一般的に東回りのほうが時差ボケになりやすいとされ、日本に戻ってくる欧州組は対策が必須。個々に任せることもあったが、ハリル・ジャパンでは'15年9月のW杯2次予選中に軽減策として、イヤホンから発せられる光を耳に照射して体内時計をコントロールする機器を試験導入した。欧州では医療機器として認可され、欧州クラブの使用実績もあったが、個人差もあり継続使用に至らなかった。その後、外部との意見交換などから出た最適解が『寝ない』だった」

 よって「長距離移動の機内で睡眠をとらないよう指示している」という内容である。

 代表が体内時計をコントロールする機器を導入していたことは筆者も初耳だった。それも2次予選からということは、ハリルホジッチの準備は結構前からスタートしていたことになる。

中村俊輔も「なるべく寝ない」に行き着いた1人。

 寝ないという原始的な結論は、指揮官から対策を講じるよう指示を受けていた早川直樹コンディショニングコーチも5月に語っていたことだ。

「移動時の飛行機内では、できるだけ寝ないほうが良い。その他食事のタイミング、日本到着後の日光を浴びるタイミング、浴びないタイミングにも注意を払いました。(3月の2試合では)パフォーマンスにどうつながったか測ることはできませんが、選手の反応は概ね良く、時差の影響が少なくなったと感じたようでした」

 UAE戦を終えて日本へ長距離移動する際は、スタッフが見回りをして選手が寝ないようにチェックするとともに、食事も全員同じタイミングで取らせるようにしている。効果があったと判断したからこそ、今回、海外組が単独で所属クラブから離れて帰国する際は基本的に寝ないように、とお達しがあったのだろう。

 時差ボケはつらいよ。

 歴代の海外組も、時差と戦ってきた。レッジーナ、セルティック、エスパニョールで7年半にわたって海外と代表を掛け持ちした中村俊輔も「なるべく寝ない」に行き着いた人だ。

「レッジーナのあるイタリア南部のレッジョ・ディ・カラブリアからミラノかローマに飛んで、そこで2、3時間待って日本行きの飛行機に乗るという流れ。あくまで自分の経験談だけど、いっぱい寝てしまうと良くない。時間がメチャクチャになって、日本に行ってから夜に眠れなくなってしまったことが1、2度あったから。逆に眠れなかったぐらいのほうが日本に戻ってから修正しやすい」

【次ページ】 2014年のコンディションは失敗だった。次こそは。

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