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2000億円が動いたプレミア移籍市場。
補強査定すると勝ち組、負け組は? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2017/09/09 11:30

2000億円が動いたプレミア移籍市場。補強査定すると勝ち組、負け組は?<Number Web> photograph by Getty Images

エバートンから加入し、さっそくゴールを決めたルカク。そのフィジカルは前線の起点役として最適だ。

残留だと信じていたチェンバレンがリバプールに。

 そのラカゼット獲得にクラブ史上最高の4400万ポンド(約62億円)を要しても、アーセナルは移籍金収支で黒字を記録したことになる。だが、銀行口座に十二分の蓄えを持ち、逆に補強不足が指摘され続けたクラブが市場で利益を生んだところで意味がない。

 移籍金収入の一部は、アレックス・オクスレイド・チェンバレン放出に伴う3500万ポンドである。7月の時点では、アーセン・ベンゲル監督が「近い将来のチームの中核」として期待を寄せ、「残ってくれると100パーセント信じている」と言っていた24歳のMFは、キャリアでのステップアップを優先し、年俸3倍で引き留めを試みたアーセナルからリバプールへと去っていった。

 ベンゲルの矛盾した発言は、今夏のプレミア移籍市場を象徴しているかのようだ。ウェストハムでは共同会長の1人が、ウィリアム・カルバーリョ獲得失敗に関して「クラブ間では合意していた」と公式サイトで伝えたところ、相手のスポルティング側に「大嘘つき」と否定された。

 また最終日のドラマの1つに、チェルシーでのメディカルチェック中に翻意したと報じられたロス・バークリーの移籍未遂があるが、その情報源はエバートン筆頭株主の発言だった。バークリー自身は、ロンドンにはいたが「メディカルは受けていない」と事後に報道を否定している。

プレミア勢は「プレミアム価格」を払わされている。

 バークリーは動かなかったが、移籍市場最終日には10クラブ計16名の新戦力を獲得した。20クラブの大半が移籍市場の早期閉幕を望んでいるはずが、リーグ開幕後も最後まで補強に勤しんでいたわけだ。その過程で発生した移籍金額は、欧州2番手のセリエAのほぼ2倍。かといって、ワールドクラスが次々にやって来たわけではないのだから、放映権収入で潤うプレミア勢が割高な「プレミアム価格」を払わされていることは明白だ。

 合わせて7億3000万ポンド(1000億円強)をイングランドから受け取った海外の売り手クラブは、“TVマネー”の札束を背負って移籍市場に現れるプレミア勢という「カモ」との商談がまとまる度に笑いが止まらないことだろう。

 しかも、移籍金の高さが選手の実力よりも“名前次第”という傾向は、、プレミア勢同士の商談にも当てはまるというナンセンスぶり。今夏の移籍市場最大の敗者は“補狂”に精を出したプレミアリーグ自体なのかもしれない。

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