海外サッカーPRESSBACK NUMBER

韓国のしらけた9大会連続W杯決定。
最終予選の歩み、日本との違いって? 

text by

吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

PROFILE

photograph byAFLO

posted2017/09/08 12:30

韓国のしらけた9大会連続W杯決定。最終予選の歩み、日本との違いって?<Number Web> photograph by AFLO

イラン対シリアの結果を受けて本大会出場が決まった韓国。選手たちは歓喜を爆発させるというより、安堵の表情を浮かべていた。

両国の最大の違いは「新戦力の発掘」だ。

 日本と韓国、今予選を通じてどこに差が出たかと言えば「新戦力の発掘」だ。

 ハリルホジッチ監督は最終予選を通じ、過去最多の30選手を起用した。最終予選の初戦UAE戦で、Aマッチキャップがゼロだった大島僚太(川崎)をボランチで起用した際には個人的にクエスチョンマークが灯ったが、そうしてまでも自身のコンセプトを突き詰めようとした。これを繰り返した結果、井手口のような“結晶”が生まれつつある。もちろん井手口自身、今後の努力は必要だが。

 対照的に、韓国はこの点がバラバラだ。

 そもそもシュティーリケ前監督は「戦術がない」と叩かれていた。予選敗退が「黄信号」とまで言われていたチームを引き継いだシン・テヨンは、土壇場のウズベキスタン戦で急造3バックを編成するなど方針はバラバラ。最終予選終盤でセンターバックの一角キム・ミンジェ(全北)が活躍し、「予選での唯一の収穫」とさえ言われたが、何かのコンセプトの下に新しい選手が発掘されたという点は全くない。

 予選後半では1トップの位置には南野拓実のチームメイト、今季公式戦で11試合7ゴールのファン・ヒチャン(ザルツブルク)が重用されたが、代表では大ブレイクとまではいかなかった。その上での「土壇場でのベテラン起用」には失望の声も挙がったというわけだ。

2大会連続「あと1年」のタイミングで監督が……。

 シン・テヨン監督は批判を浴びたウズベキスタン戦後「自分は攻撃的なサッカーが好きだ」と口にしている。それだけに選手選抜に関してもこの先の展望もまったく不透明。韓国は前回大会も最終予選後にチェ・ガンヒからホン・ミョンボへのバトンタッチがあった。つまり、2大会連続で本大会まであと1年、というタイミングでチーム作りのやり直しを行う事態に陥っている。

 言い換えるならば、日本には大きな歴史の流れのなかで代表チームの在り方を議論できる。オシムが日本化を目指したが病に倒れ、それを完遂することはできなかった。それを引き継いだ岡田武史監督の守備的サッカーでは、2010年W杯では結果が出た。しかしこれに満足することなく、2014年はザッケローニの下、攻守バランスの針を攻撃面に寄せるサッカーを志した。これは一転、本大会で結果が出なかった。その結果、今はやや現実主義に近いハリルホジッチのサッカーに移り変わっている。

 この方向性が正しいのか、選手起用はどうか。長期的にチームを強くするにはそういった議論が可能なのだ。韓国と比較した時、これは非常にポジティブなことだ。あちらは流れがぶつ切れの状態なのだから。

【次ページ】 フランスW杯以降の本大会勝ち点を比べると。

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
キム・ヨングォン
シン・テヨン
ロシアW杯
ワールドカップ

海外サッカーの前後の記事

ページトップ