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菊池雄星は何を信じ、何を疑ったか。
二段モーション問題からの復活劇。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2017/09/04 17:00

菊池雄星は何を信じ、何を疑ったか。二段モーション問題からの復活劇。<Number Web> photograph by Kyodo News

プロ7年目、菊池雄星の巨大な潜在能力がついに大きく花開こうとしている。フォーム問題もいい形で決着してほしいものだ。

審判長の事情説明に、「納得できないですよ」。

 その説明を受けて土肥コーチが発した言葉が、西武側の混乱を示している。

「今まではそれすら説明がなかった。(投球フォームに)段がついているなら、そう言ってくれればもう少し対処のしようがあったんですけど、その説明がなかったですから」

 ここから問題が急展開する。

 翌25日に、友寄正人審判長が事情説明をマスコミに向けて行ったのだ。これには菊池本人を含めて球団は衝撃を受けた。

「反則事由」ではない。根も葉もない内容だけが一方的に報道されたからだ。

・何度も菊池に反則の注意を行っているが、改善が見られない。
・ほかの投手にも注意している。菊池だけが直さない。

 菊池はその時の胸の内を、近しい記者にこう打ち明けている。

「何度も注意したと審判長は言っていますけど、それはイニング間に歩きながらのことでした。それ1回きりです。それは注意だったのか分からないです。ソフトバンク戦のあと、2段モーションは『止める』のが問題ではなく『上下すること』だと知りました。納得できないですよ」

話し合いの席で、菊池は審判団を問いただした。

 27日、友寄審判長が西武球団や本人たちとの話し合いのため、メットライフドームを訪れた。そのとき、5月12日の試合で真鍋審判員が菊池に注意したことを、審判団が把握していなかったことが確認された。「何度も注意した」という報道も真実と異なることが分かり、菊池はその席で審判団の姿勢を問いただした。

「1人の意見を、それも審判団が誰ひとり把握していないものを、それを注意といえるのでしょうか」

「ほかの選手には注意した段階で『どこが悪いか』を説明して頂けていますがが、なぜ、今回は教えてくれなかったのですか」

 前者の質問に対して友寄審判長は「それは注意とは言わない。初めての注意は8月10日だったと訂正する」というものだった。

 しかしその後、審判団の方から発言を撤回したという報道はいまのところ聞こえてこない。

【次ページ】 審判への不信感と、エースとしての責任感。

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