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「自分のゴルフ人生嫌いじゃない」
岩田寛、米国での2年間を財産に。 

text by

桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2017/08/28 07:00

「自分のゴルフ人生嫌いじゃない」岩田寛、米国での2年間を財産に。<Number Web> photograph by AFLO

世界の頂点を視界に入れたわけではなかった。しかし岩田のような挑戦者がいることで、日本男子ゴルフの国際競争力が上がる。

「ずっと世界を意識して練習するしかない」

 岩田は現実を直視し、よどみなく言葉を並べた。

「こっちでは色んなコースを知れる。日本とはまずコースが違う。でもこっちの人にとっては、ずっとこれが“普通”。サッカーと野球って、世界どこでも基本的には(戦う条件が)同じじゃないですか。コートの大きさ、ピッチャーとの距離、塁間……。でも、ゴルフは明らかに(地域によって)違うから」

 プロアスリートであれば本来、誰もがトップを目指してキャリアを過ごす。男子ゴルフでいえば、多くがPGAツアー、メジャーで活躍する夢を見る。だが、それらが日本で行われない以上、岩田は海を渡ることが目的に沿った手段だと確信している。

「それか、ずっと世界を意識して練習するしかない。自分で想像し続けて、あとはこっちに来たときに対応する。(松山)英樹とかはずっと、(日本でも)世界を意識して練習してきたんだと思う。それで、こっちで足りなかったものに気づいた。アイアンは元々、世界クラスだったけれど、アプローチの打ち方を変えたりしたんじゃないですかね」

 他にも、同じような理由で海を渡った選手もいると言う。

「ヨーロッパでもいい。(アジア、欧州ツアーに参戦した)平塚哲二さんも、ヨーロッパは飛距離が出る選手でなくても通用するコースもある、と言ってましたから。国を挙げた盛大な試合も多いらしいしね。違う国に行くから気分転換にもなるって」

海外で活躍する日本人の仲間が増えることで……。

 後輩の松山が世界トップレベルの力を見せる一方で、海外でプレーする日本人選手が続けざまに出ることは、活躍の機会が数として増えるだけでなく、個々のレベルアップにもポジティブな面があるという。

「そうしたら僕みたいに(心が)苦しまない。練習ラウンドを一緒にして、ご飯を食べて。僕はスコアが悪いと部屋から出なかった。でも人と約束していたら……。それが例えば谷さん(谷原秀人/東北福祉大の先輩)だったら、ドタキャンできない(笑)」

 個人スポーツのゴルフ。身寄りのない場所で孤独感はいっそう高まる。そんな世界でも、仲間が増えれば乗り越えられるかもしれない、と実感できた。

【次ページ】 全米プロでは当時のメジャー最少スコアに並んだ。

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