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プレミアのキック&ラッシュは終焉か!?
外国人監督急増による戦術革命を検証。 

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パトリック・ウルビニ

パトリック・ウルビニPatrick Urbini

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photograph byAlain Mounic

posted2017/08/27 09:00

プレミアのキック&ラッシュは終焉か!?外国人監督急増による戦術革命を検証。<Number Web> photograph by Alain Mounic

プレミアリーグの多くのクラブが、勝つため必然的に、伝統的な「キック・アンド・ラッシュ」を放棄し始めた。

圧倒的に強いチェルシーが対戦相手に強いた戦術変更。

「コンパクトなブロックを維持しながら、ボールを奪われた瞬間に相手にプレッシャーをかけて素早く取り戻し、選手は自分たちのポジションから決して離れない」(コンテ)プレースタイルで、チェルシーはリーグ13連勝を記録した。

 そのうえ彼らは、ほぼすべての対戦相手に解決できない問題を突きつけた。

 それはモーゼスとマルコス・アロンソのサイドでの豊富な運動量であり、ペドロとアザールの中央とサイドの間のスペースや相手ボランチのゾーンでの危険なプレーであり、それらが生み出した際立って効果的な「崩しの動き」などであった。

 自分たちのプレースタイルを押し通すことでチェルシーは、ライバルたちに対応を強いただけでなく、リーグのタイトルまで獲得してしまった。

 結局、対戦したチームのうちの8つが、同じ3-4-3で試合に臨むか、4-2-3-1に変更して対処したのだった。

 だがその戦術変更の目論見で成功したと言えるのは、1月4日に対戦したトッテナム(2-0)と、4月16日に戦ったマンチェスター・ユナイテッド(2-0)のみだった。

ベンゲルの監督就任以来初となる3バックを採用!?

 アーセナルもまた、クリスタルパレスに0-3と惨敗した後、4月半ばのミドルズブラ戦から、アーセン・ベンゲルが監督に就任して以来20年間ではじめて3バックを採用して2-1の勝利を収めた。

 この変更でディフェンスは安定を取り戻し、空中戦の不安を払拭してシーズンの帳尻を合わせることに成功した。リーグ最後の8試合で7勝をあげたのに加え、FAカップ決勝でチェルシーを2-1と破り13度目の優勝を成し遂げたのだった。

 とはいえ3バックと4バックに関係なく、プレーの効率とコレクティブな流動性、アイディアを保ち続けているのは、トッテナムとマンチェスター・シティぐらいだろう。

 ポゼッションの概念、バルセロナとスペイン代表が10年前に提示し、以来大きな影響を世界に与えてきたスタイルは、プレミアリーグの中にもその痕跡は見られる。

 昨年優勝のレスターのボール保持率はわずか43%、今年のチェルシーも55%に過ぎなかったが、グアルディオラのマンチェスター・シティは65%に及び、シーズンを通しておよそ23000回のパスをピッチ上で試みた。その数はバーンリーの2倍で、成功率も他の追随を見ない86%であった。

【次ページ】 最先端の戦術を持つ強豪に、同じ戦術で臨む愚かさ。

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マンチェスター・ユナイテッド
アーセン・ベンゲル
ウェイン・ルーニー
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チェルシー
ロベルト・マンチーニ
マンチェスター・シティ
クラウディオ・ラニエリ
レスター
アントニオ・コンテ

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