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サニブラウンが世界陸上で得たもの。
メダルへの距離、新たな「仲間」。 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byAFLO

posted2017/08/23 11:10

サニブラウンが世界陸上で得たもの。メダルへの距離、新たな「仲間」。<Number Web> photograph by AFLO

200m決勝で、足の痛みもあってか悔しそうな表情を見せるサニブラウン。しかし18歳で決勝の舞台に立ったことは十分に偉業だ。

いつもクールなサニブラウンが珍しく……。

「200mと違って100mは1つでもミスを犯すと、巻き返すのが大変なんだなと思った。この敗因を次につなげられればと思います」

 悔しさと情けなさ、様々な感情が入り交ざった表情を浮かべながらも、報道陣に真摯に向き合う。しかし頭の整理ができない。

「すみません、何を言っているのか自分でもわからないです」と言って、スタジアムを後にした。

 普段、どんな場面でもクールなサニブラウンが感情的になったことが意外だったが、それだけ今大会に懸けていた証でもあった。

 100m決勝は35歳のジャスティン・ガトリンが6大会ぶりの金メダル、21歳の新鋭、クリスチャン・コールマンが銀メダルで米国勢がワンツーをとり、ボルトは3位に終わった。

雨男の異名通り、200mではいい走りを見せたが。

 それから2日後、8月7日の200m予選。100mの失敗からメンタル面は切り替わっていたが、足に大きな不安を抱えていた。100m準決勝でつまずいた際に右足に負担がかかり、張りと痛みが出ていた。

 スタートから飛ばすのは危険とコーチは判断し、後半勝負を指示。後半追い上げて組2位で予選通過した。

 準決勝の日は寒さと雨が選手たちを襲った。ここで雨男の異名をとるサニブラウンは本領を発揮する。予選とは一転、スタートから飛び出し、トップで直線に。後半少し遅れをとったものの、2位を死守した。

「決勝では足がもげてもいいという気持ちで走りたい」

 闘志をしっかりと口にしたサニブラウンは、言葉通り、決勝で攻めた。スタートから飛び出し、先頭争いをしながら直線に。しかしそこで右足に痛みが出たため、「もう一段ギアを上げられず」失速し、7位だった。

 レース後に「足が痛かったです」とポツリとこぼしたが、痛みを口にするほど万全ではない中で3本走った怪物ぶりが際立った。

【次ページ】 オランダでできた、メダリストの仲間たち。

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