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“レジェンド”朝原宣治が語る世陸。
「リレーの選手交代」の功績について。 

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別府響(文藝春秋)

別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu

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posted2017/08/22 08:00

“レジェンド”朝原宣治が語る世陸。「リレーの選手交代」の功績について。<Number Web> photograph by Kyodo News

出場した選手もそうでない選手も、そして彼らを支えたスタッフも、全員で勝ち取ったメダルであることは間違いない。

MVPを挙げるなら桐生と藤光。

 4×100mリレーではリオに続いてのメダルとなる、銅メダルを獲得しました。

 今回は全員が万全の状態というわけではない中、想定外のメンバーで走ってメダルを獲ることができた。これは日本短距離界全体のレベルアップもそうですし、スタッフやコーチの判断もより正確に、適確になってきている結果だと思います。

 リオのメンバーがそのまま走ることができれば、もっと楽に走ることはできたのかもしれません。でも、サニブラウン君が出てきて、山縣(亮太)選手が出られずに多田(修平)選手も出てきた。いろんな意味で新しいチームだったし、走順をふくめて新しい施策が求められたと思います。

 MVPを挙げるなら、リレーメンバーとして走った桐生(祥秀)君と藤光(謙司)君でしょうね。

 リレーに向けての調整ということで、現地に入ってから長かったと思うんです。個人種目に出ずにリレーだけ走るというのは、そこまでの調整の難易度が高い。それまで全く試合をせずにその日を迎えて、いい走りをしたというのはとても評価できます。

 特に藤光選手は決勝のみの出場。予選で全体6位ともうひとつだったところから採用されて、アンカーを託されるというのは非常にプレッシャーのかかる場面です。結果を出さないといけないところできっちり走ってくれ、大きな役割を果たしたんじゃないかと思いますね。

陸上選手はあまり「選手交代」に慣れていない。

 実は、日本チームが予選と決勝で選手を入れ替えるというのは、過去の大会でもほとんど経験がないんです。

 陸上において、選手の交代は簡単なことではない。

 バトン技術もありますが、それ以上に精神的な部分の影響が大きいからです。失敗したら走った選手に対して「なんで代えたの?」となりますし、成功しても今回のケンブリッジ(飛鳥)選手のように、誰かが「なんで外されたんだろう?」と思うはず。

 そもそも陸上選手はあまり「選手交代」に慣れていないんです。

 自分の実力不足やタイムがダメで次に進めないことはあるとしても、スタッフの判断で外されることって陸上ではリレーくらいしかない。だからこそ、そこはやっぱり難しいんですよね。

【次ページ】 逆境でもチームとしてしっかり走れたという功績。

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