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送りバント、スクイズ、好走塁……。
広陵は驚くほど“The高校野球”だ。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2017/08/17 17:00

送りバント、スクイズ、好走塁……。広陵は驚くほど“The高校野球”だ。<Number Web> photograph by Kyodo News

平元のスクイズが結果的に決勝点となった。豪快なチームが増える中で広陵の“高校野球”らしさは逆に新鮮に映った。

バント、走塁を丁寧にやってきたからできること。

 中井は少ないチャンスをモノにした選手たちについて、誇らしげにこう語った。

「スランプに陥らないのを大事にしよう、と常日頃から言ってきました。キャッチボールやバント、走塁を丁寧にやってきたチームで、ここにきてそういう野球ができたと思います。スクイズのサインは勇気がいるんですけど、相手は強いチームですし、攻めていくしかない。受け身になったら負けるという気持ちで思い切って出しました」

 3度目のチャンスも、積極策によって得点をもぎ取った。

 好投していた平元に代打を送って作ったチャンスで、主砲・中村奨成が3ラン本塁打を放って試合を決めたのである。

平元の球数が100球を超えたのは、7回1死だった。

 攻撃だけでない。守備面でも平元―中村のバッテリーを中心に、訪れた計3度のピンチを無失点に抑えたことも勝利を大きく引き寄せた要因だ。

 試合前、秀岳館の鍛治舎巧監督はポイントとして、広陵の平元を挙げていた。

「おそらく先発は平元君になるだろうと思いますが、100球を超えるとコントロールと球威、ばらつきがでてくると予想しています。100球を過ぎたあたりが勝負。その100球がどのイニングになるか。5回か6回になるのか。8、9回になればうちは苦戦を強いられているということです」

 平元が100球を迎えたのは、7回1死のことだった。

 実際、その時に平本は足をつっていた。鍛治舎監督の目論見は当たっていたが、すでに試合の趨勢は広陵のものになっていた。

【次ページ】 接戦の時は守りをきっちりできないとダメ。

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