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元日本代表・狩野美雪とデフバレー。
指揮官として得た金メダルの意義。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byJapan Deaf Sports Federation

posted2017/08/13 07:00

元日本代表・狩野美雪とデフバレー。指揮官として得た金メダルの意義。<Number Web> photograph by Japan Deaf Sports Federation

狩野監督(前列左から3人目)率いる日本が手に入れた悲願の金メダル。ただ競技のさらなる認知のためにはここでとどまるつもりはない。

デフバレーの発展を自分たちが担っているつもりで。

 大会前、狩野監督は危機感をにじませながら「最低でもメダル」と何度も口にしていた。

「デフバレーは、まだ知らない人が多い競技で、障害者スポーツの中でもパラリンピック競技との差がかなりある。だから自分たちがメダルを獲ることで、いろんな人に知ってもらいたい。デフバレーの発展と言ったらちょっと言いすぎですけど、そういうものも自分たちが担っているつもりでやっています。だから最低でもメダル、もちろん金メダルを目指して、やらせていただいています」と語っていた。

 聴覚障害者のスポーツは、パラリンピックの実施競技には含まれない。聴覚障害者は身体的には健聴者と変わらないため、パラリンピックで実施されているような他の障害者スポーツに比べて、デフスポーツは一般のスポーツに近い形で行われるから、ということが理由の1つである。

 また、デフスポーツには、プレーする側も運営する側も聴覚障害者が中心になって行うというコンセプトがあることも理由に挙げられる。

今後はさらに競技レベルを上げていくことが大事。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まって以降、パラリンピック競技とデフスポーツの、活動予算や環境面の差は広がっている。

 デフリンピックの開催中は日本選手の活躍が新聞の紙面でも取り上げられたが、それはスポーツ面ではなく社会面で扱われた。

「スポーツというより社会福祉というふうに見られているんでしょうね」と狩野監督は言う。

「見る人にとっては聴覚障害者かどうかはわからないわけだから、競技自体が一緒である限り、やっぱり競技レベルを上げていくことが、スポーツ面で扱われるためにも一番なんじゃないかなと思います」

 それでも“世界一”というのは唯一無二のもの。多くの人の思いがこもった金メダルが、デフバレーボールの現状を上向きに変える礎となることを願う。

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狩野美雪
竹下佳江

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