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Bリーグ1年で最も成長したチーム。
個性と成熟、ジェッツが求める両極。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2017/07/27 11:00

Bリーグ1年で最も成長したチーム。個性と成熟、ジェッツが求める両極。<Number Web> photograph by AFLO

千葉ジェッツはSNSなどファンサービスも多彩なチーム。船橋アリーナは千葉の新たな名所になっている。

選手の個性を尊重し、役割を明確にする。

 自分たちの強み――。

 それがジェッツのキーワードだった。1年を通して、大野は選手たちに問いかけた。自分の得意なことは何なのか。苦手なことは何なのか。

 得意なプレーを見せるときに、アスリートは最も大きな輝きを放つ。それをチームとして追求したからこそ、ジェッツはリーグ有数の個性的なチームになった。

 ポイントガードの富樫は日本人4位タイの1試合13.2点という得点力を備える一方で、平均アシスト数も4(50試合以上出場した選手のなかで3位)など、決定的なパスも出してきた。

 脱サラしてプロになった異色の経歴の持ち主である石井は、3Pの成功率がリーグ2位。キャプテンの小野は197cmという長身ながら、アウトサイドからのシュートを涼しげに決めた。他にも成長著しく日本代表候補に入った原修太や、アグレッシブなプレーでファンの心をつかむ阿部友和もいる。

 チーム最年長の38歳にして、理論派のセンター伊藤俊亮は個性が際立っていた理由をこんな風に語る。

「プレーの面では、ヘッドコーチの仕事の振り方が結果に表れているんじゃないかなと思います。それぞれが役割を理解し、頑張る。シーズンの最初から最後まで本当に徹底していましたから。そこは、お客さんにも楽しんでもらえた要因の1つなんじゃないかなと思います」

アメリカ人選手だけが得点するチームにはしたくない。

 指揮官の大野は、選手の特長を引き出そうと考えた狙いを以下のように説明する。

「もちろん助っ人のアメリカ人選手の力もすごく大切なのですが、彼らだけが得点をとって勝つだけのチームにはしたくないと思っていたので。例えば、富樫を活かすのはピック&ロール(スクリーンを使い、スクリーンをかけた選手がゴール方向にターンする形)を使った攻撃ですし、石井にはシュートを打てと言い続けてきました。小野の持っているスキルはスモールフォワードで活きると思っていますし。彼らが活きるようなアーリー・オフェンスも作りました」

 その狙いは成長神話として結実し、選手たちは活き活きと個性を開花させていった。

 では、優勝するためには何が足りなかったのか。

 1つには、各選手の武器が明確なため、相手に対策されやすかったことだ。栃木とのCSでは徹底的に対策を練られ、いつものようなピック&ロールからの攻撃は見られなかったし、リーグ最多の3Pシュートを決めたシューター陣も沈黙した。

 ジェッツが武器を磨けば、当然相手はその特長を消そうとしてくる。これからは、相手の対策を上回る準備が求められることになる。

【次ページ】 大野コーチ「チームとしての成熟度で負けた」

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