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デカくて強い選手が速く走れたら。
いわきFCはサッカーの常識を壊すか。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byKyodo News

posted2017/07/05 17:00

デカくて強い選手が速く走れたら。いわきFCはサッカーの常識を壊すか。<Number Web> photograph by Kyodo News

明らかに数年前とは一回り体の大きさが違ういわきFCの選手たち。フィジカル重視のスタイルは日本でも成功するのか。

80点くらいはスキルで取れる、あと20点は身体。

 筋肉をつけると動きが重くなるという俗説は、迷信にすぎない。そう断言していいだろう。いまだに迷信がまかり通っているのは、昔のボディビルとの混同もあり、パフォーマンスとストレングストレーニングがリンクするという考えが行き渡っていないからなのか? 念のため鈴木に確かめると、彼自身が筋骨隆々のパフォーマンスコーチは、責任の一端を感じているのだろう。申し訳なさそうに頷いた。「そこはまだ発展途上の部分ですね」と。

 鈴木には確信がある。ラグビー日本代表が南アフリカを撃破した、いわゆるブライトンの奇跡。巨大なうねりのようなあの感動を、サッカー日本代表も生み出せるはずだと。

「100点満点の80点くらいはスキル中心でも取れるでしょう。残り20点を埋めるには、どれだけ走れるか、どれだけぶつかれるか、どれだけ倒れないか。そこで差が出ると思います。ぎりぎりのせめぎ合いで、あと一歩が出せれば、ぶつかり合っても倒れなければ」

日本人の良いところは、過酷なトレーニングへの耐性。

 現場をよく知るパフォーマンスコーチならではの楽観もある。

「日本人の良いところは、どれだけ過酷なトレーニングでも頑張れるところなんですよ」

 ブライトンの奇跡を起こしたエディー・ジャパンが、まさしくそうだったと伝え聞く。

 そんな未来のためにも、不可欠なのが指導者たちの意識改革だ。鈴木の話を聞いていると、不思議でたまらなくなってくる。なぜ、もっと鍛えないのだろうか? 技術や戦術にフィジカルを上積みすれば、鬼に金棒ではないか。あるいは、フィジカルを鍛えずにピッチに立つのは、徒手空拳で戦地に赴くようなものではないのかと。

 いわきFCが飛び抜けた存在になっていけばと、そんな想像もしてみたくなる。“日本国内のアフリカ”のような突き抜け方をすれば、問題提起の鋭さも増すだろう。

 具体的なイメージは、'14年ワールドカップで日本代表を叩きのめしたコートジボワールのディディエ・ドログバだ。いわきFCがドログバのようにそびえ立ち、圧倒して、捻じ伏せる。清水エスパルスというJ1クラブの胸を改めて借りる7月12日の天皇杯3回戦で、その片鱗を見せれば、不思議に思う人が増えるかもしれない。なぜ、もっと鍛えないのだろうかと。

※ドームアスリートハウスとは……「最新の専門的かつ科学的な情報を提供し、トレーニングの方向性を持たせ、システマチックに行うことでアスリートのパフォーマンスを高めることのできる日本唯一のアスリート専用のパフォーマンス開発機関」(公式ホームページより)。いわきFCと同様に、アンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドームの傘下にある。

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