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ル・マンで豊田章男社長が語った、
ピット裏に掲げた「日の丸」の意味。 

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樹本野真波

樹本野真波Nomaha Kimoto

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photograph byNomaha Kimoto

posted2017/07/11 11:00

ル・マンで豊田章男社長が語った、ピット裏に掲げた「日の丸」の意味。<Number Web> photograph by Nomaha Kimoto

レーシングスーツで現れた豊田章男社長(左)と“ドクター”の愛称を持つヴォルフガング・ポルシェ氏。

ドライバーに対し「出てきた言葉は“楽しめよ”だった」。

 豊田氏は今年のレース直前のインタビューでこう語った。

「レースに出る人はみんな勝ちたいと思っています。ただ、そんなに簡単なことではないんです。我々のチームは昨年の結果からこの1年間とんでもないプレッシャーのなかでやってきました。私のような“負け嫌い”がトップにいるトヨタ自動車が負けた。でも負けたトヨタが1年間どんな準備をしてきたんだろうかと思って、ポルシェはもっとやってくる。そう思っていました。そんななか、今日もドライバーに声をかけるときにどんな言葉をかけようかと思いましたが、出てきた言葉は“楽しめよ”だったんです」

 やるべき準備はしてきたはずだ。だから信じて思い切りやれ。ボスの言葉はチームを鼓舞するとともにそのなかを支配しようとしていた余計な緊張感を一気に払拭した。

小林可夢偉「(去年と比べて)いいな。速いな」

 実はル・マンでの決勝レースから約3週間前、ル・マンで走る日本人ドライバー三人に話を聞いていた。

 今回、初参戦となった国本雄資は「まだ走っていないのでわからないですけど、初めての24時間のレースで、初めてのル・マンでいろんな大変なこともあると思うし、スティントごとに辛いときとか速いときとかいろいろあると思いますが、そういうのをひっくるめて全部楽しんでいけたらいいかなと思います」と静かに語ってくれた。

 昨年、23時間57分で車が止まり、完走を果たせなかった中嶋一貴も「もちろんいい状況で(レース当日を)迎えられることは間違いないんですけど、本当に一発勝負のレースなので、やるべきことに集中するしかないなと思っています。ただチームは、去年のレースがあってから、この1年、本当にいい準備ができていると思いますし、2012年以来、何回もル・マンを戦っていますけど、その中で一番、根拠のある自信……、自信? なんて言うか、やれるんだという気持ちをもって臨める年だと思うので、あとは本当にやってみるしかないと思うし。ポルシェは速いかもしれませんけど、それはそれでやってみて、24時間をまずは走りきることかなと思っています」と語った。

 今回、ル・マンのコースレコードを大きく塗り替え、TOYOTAに大きな光明をもたらした小林可夢偉も、今年の車の調子を聞くと「(去年と比べて)いいな。速いな。実際、ルール的に去年よりダウンフォースが減っているはずなのに、減っているけども、いい、速いというのはどういうことやねん? と思いながら走っていました(笑)。タイム的に見れば、ぜんぜん速かったから」と前向きにル・マンへの準備を進めていることを明かしていた。

 実力は国内トップクラスの三人だが、このときすでにメンタル面でもレースに臨む準備がほぼ整っていたのである。

【次ページ】 豊田「思いっきり走らせてあげられなくてゴメン」

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