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キタサンを見ていたサトノクラウン。
宝塚の運命を変えたデムーロの腕力。

posted2017/06/26 11:25

 
キタサンを見ていたサトノクラウン。宝塚の運命を変えたデムーロの腕力。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

サトノクラウンのGIでの着順は、6、3、17、12、6、14、1、6、1。波はあるが、ハマればとことん強い。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Yuji Takahashi

 現役最強馬が直線で馬群に沈み、阪神競馬場のスタンドはどよめきに包まれた。

 第58回宝塚記念(6月25日、阪神芝内回り2200m、3歳以上GI、出走馬11頭)を制したのは、ミルコ・デムーロが騎乗した3番人気のサトノクラウン(牡5歳、父マルジュ、美浦・堀宣行厩舎)だった。馬場コンディションは稍重で、勝ちタイムは2分11秒4。

 単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持された武豊のキタサンブラック(牡5歳、父ブラックタイド、栗東・清水久詞厩舎)は9着に敗れた。

 ゲートが開き、正面スタンド前で先頭に立ったのはキタサンブラックではなく、天皇賞・春の2着馬シュヴァルグランだった。クリストフ・ルメールのシャケトラがつづき、キタサンはそれらに次ぐ3番手の外につけて1コーナーを回った。

 これまでもキタサンは好位から抜け出す競馬で勝っている。ハナを切らなかったからといって、驚くことではない。

 向正面で掛かり気味になり、武が後ろに重心をかけて手綱を引いていたが、前走の天皇賞・春でも見られたことだから、これも心配する必要はないように思われた。

 1000m通過は1分00秒6。力のいる馬場状態だったことを考えても、先行馬にとって厳しいペースではなかった。

 しかし、サトノクラウンがポジションを上げてきたことで、そこから全体の流れが速くなり、先行集団は11秒台後半のラップを刻みながら3、4コーナーを回って行った。

武豊「うーん、走らなかったですね」

 誰もがキタサンブラックの異変に気づいたのは、内のシャケトラに馬体を併せるようにして直線に向き、武の右ステッキが入ったときだった。いつもなら、力強い走りで後続を置き去りにするのに、シャケトラをなかなかかわせない。それどころか、外から来たサトノクラウンにあっさり追い抜かれ、そのほかの馬にも次々とかわされ、勝ち馬から8馬身ほども離された9着に敗れた。

「うーん、走らなかったですね」

 と武は首をかしげ、言葉をつづけた。

「正直、ちょっとよくわかりません。ここまで(負けたの)は初めてですから。何ででしょう。残念です。馬場はここまで影響するほどではなかっし、雨もそれほどではなかった。状態も気になるところはなく、返し馬も悪くなかったし、レースで不利もなかった。わかりません。全部勝つのは難しいですね」

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