ル・マン24時間PRESSBACK NUMBER

「180/86400秒」を探ったTOYOTAに、
今年も微笑まなかったル・マンの女神。

posted2017/07/05 11:15

 
「180/86400秒」を探ったTOYOTAに、今年も微笑まなかったル・マンの女神。<Number Web> photograph by TOYOTA

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

PROFILE

photograph by

TOYOTA

 今から約20年前の1998年、パノス・エスペラントQ9と称する奇怪なマシンがル・マン24時間レースに現れた。史上初のハイブリッドシステムを搭載したル・マン用レーシングカーである。

 世界初の量産ハイブリッド専用車としてプリウスが発売されたのは前年のこと。ハイブリッドカーそのものがまだ世間に浸透していない時代に開発されたパノス・ハイブリッドが世界一過酷な耐久レースであるル・マンに通用するはずもなく、キワモノの域を抜け出すことができないまま予備予選で脱落して姿を消してしまった。

ル・マン史上最高性能となったハイブリッドカー。

 だがそれから20年が過ぎ、時代は変わった。ハイブリッドカーは世界各地へ普及し、一般ユーザーが愛車として使いこなすようになった。ル・マンでもハイブリッドカーは進化を遂げ、2012年にはアウディがハイブリッドカーとして初の総合優勝を飾り、その後ポルシェもハイブリッドカーで勝った。

 今やハイブリッドカーはル・マン史上最高性能を誇る競技の主役である。なにしろ今年、トヨタTS050ハイブリッドに乗る小林可夢偉が公式予選で記録した3分14秒791というラップタイムは、1990年に減速用シケインが設置される以前のユーノディエールストレートをターボ過給ガソリンエンジン車が突進していた頃よりも速い驚異的なコースレコードなのだ。今年は、ハイブリッドカーの元祖であるトヨタが満を持して歴史あるル・マンの勝者になる番だった。

 昨年、24時間レースの残り数分というところまでレースを支配しながら思いがけないトラブルに見舞われて歴史的惜敗を喫したトヨタは、1年間にわたって徹底的な改良を加えTS050ハイブリッドの完成度を引き上げた。今年のマシンについてドライバーたちは、車両規則が変わってダウンフォースが減って、性能は低下するはずなのに今年のマシンは去年のマシンよりも速くなっていると証言する。

 実際、今年世界耐久選手権シリーズが開幕すると開幕戦シルバーストーン、第2戦スパ・フランコルシャンと連勝し、第3戦のル・マンに乗り込んだ。6月4日のテストデー、6月14日の公式予選1日目、6月15日公式予選2日目とトヨタは最速タイムを記録し、その勢いは止まらないかに見えた。

 しかし6月17日午後3時に決勝レースが始まると、状況はそれ以前の流れほど楽に進まないことが明らかになった。というのもライバルであるポルシェがトヨタに対して常にプレッシャーを与えるポジションにつきまとったからだ。

【次ページ】 異常な暑さの下、まさにデッドヒートの展開に。

<< BACK 1 2 3 NEXT >>
1/4ページ
関連キーワード
小林可夢偉
中嶋一貴
TOYOTA GAZOO Racing
ル・マン24時間耐久レース

ページトップ