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東京五輪マラソンのメダルは可能か。
平均は上がれどトップが伸びず……。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2017/06/09 07:30

東京五輪マラソンのメダルは可能か。平均は上がれどトップが伸びず……。<Number Web> photograph by Kyodo News

スズキACの安藤友香が出したタイムは、野口みずき、渋井陽子、高橋尚子に次ぐものだった。ちゃんと狙えば、選手はちゃんと育つのだ。

スズキ浜松ACは、スポンサーぐるみでマラソンに注力。

 しかし、発想の転換によって、明らかに結果が変わってくる例も紹介された。スズキ浜松アスリートクラブだ。

 今年の名古屋ウィメンズマラソンでは、安藤友香が初マラソンで日本人最高記録、そして日本歴代4位となる2時間21分36秒をマークして世界選手権の代表に決定。さらには、清田真央も2時間23分47秒の好タイムを出して、こちらも世界選手権の代表となった。スズキ浜松ACの指導者からは、こんな話があった。

「スポンサーである会社から、2020年があるならば駅伝よりもマラソンに力を入れていきましょうと明確に方針が出たので、マラソンに注力してきました」

 スズキは2010年3月に実業団連合を退会しており、実業団連合が主催する大会に出場することはできない。他社が駅伝を重視する中、マラソンに特化することで結果に結びつけてきたわけだ。

 男子にも同じような流れが出てくれば、オリンピックに向け、選考レースのレベルが上がってくることも期待できる。

瀬古リーダーは、「スター」登場を待っている。

 瀬古プロジェクトリーダーはいう。

「実業団のみなさんにとって、駅伝が大事なのは分かる。でも、駅伝からマラソンでは無理。あくまでマラソンを見据えたうえで駅伝、と逆をやらないとダメです。それに学生は箱根駅伝が勘違いの元。報道がものすごいし、そこでスターになるとみんな満たされてしまう。『神様』なんていないんだから、その先の世界があることを分かって欲しいんです」

 日本陸連の、長距離界が一体となって強化を進めていくメッセージは強い。賛同者も増えている。しかし、企業の「縄張り」意識もまだまだ強い。

 瀬古プロジェクトリーダーとしては、強化方針に沿って出てくる「スター」の登場を待っていることだろう。

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瀬古利彦

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