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「バドミントンで8位」の価値は?
大岩義明が世界的馬術大会で偉業。 

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北野あづさ

北野あづさAzusa Kitano

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photograph byAzusa Kitano

posted2017/06/07 07:30

「バドミントンで8位」の価値は?大岩義明が世界的馬術大会で偉業。<Number Web> photograph by Azusa Kitano

ボウフォート公爵が所有する「バドミントン・ハウス」を背にした大岩。この広大な個人宅には第二次世界大戦中、王室関係者も疎開していた。

トップレベルでは時速35kmで障害物を走り抜ける!

 1種目めの「馬場馬術」は決められた運動を、正確にのびのびと実施すると高得点が得られる。

 開始直後に少しだけ馬と息が合わずにミスが出てしまったが、その後は持ち直して得点を伸ばし、暫定12位となった。

 次がいよいよクロスカントリーだ。

 コースがオープンしてから本番まで、大岩は何度も下見をした。コーチと一緒に、自分1人で、あるいは選手仲間と一緒に。

 コースの順番を覚えることももちろん大切だが、それほど単純なものではない。選手が何度も下見を繰り返すのは、ラインを見極めるためだ。障害物をミスなく飛び越えるだけではなく、タイムもまた結果に大きく影響する。

 トップレベルの競技においては、クロスカントリーを分速570mで走ることが求められる(時速にすると35km程度)。コースの長さとこの分速から規定タイムが割り出され、そのタイム内にゴールすれば減点はないが、1秒オーバーするごとに0.4点ずつ減点が加算されていくのだ。また、もし、障害物の前で馬が止まってしまうようなことがあれば、一気に20の減点が加わってしまう。

 大岩は自身のTwitterで「かなり手強いコース。すべて障害はデカイ。序盤から良いペース、流れを掴まないとゴールするのは難しい。デュークの呼吸を感じながら、ペース配分してゴールを目指す。僕が良いショットで障害に向ける、飛ぶのは任せるぞ」と愛馬に語りかけた。

最後の最後までコースの下見をし続けた大岩。

 当日の朝、そして自分よりも早い出番の選手が走行している時も、大岩はコース脇を歩き、最後の最後までベストを尽くすためのイメージを作っていた。「できることはすべてやってきた」という自信が、難コースに挑む大きな力になることを大岩はよく知っている。実際、大岩は冷静だった。

 何度も下見をして立てたプラン通りにザ・デュークオブカヴァンを導いた。馬もそれによく応えた。初めて見る大きな障害物に臆することなく、大岩の指示に耳を傾けた。“針の穴に糸を通すような”ラインも、外すことなく確実に抜けていった。大きな階段をリズムよく下り、池に飛び込み、障害物に対して斜めにアプローチし、ライン上にある木と木の間をすり抜けて、でき得る限りのショートカットを駆使して、力の限り走って、そしてゴールに飛び込んだ。

 規定タイムを39秒オーバーしたため減点15.6が加わったが、トータルで順位を2つ上げて10位となった。

【次ページ】 競技同様に難関の「ホース・インスペクション」。

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大岩義明
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