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FA杯優勝を“花道”にすべきだった?
ベンゲル続投にファンが賛否両論。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2017/06/04 07:00

FA杯優勝を“花道”にすべきだった?ベンゲル続投にファンが賛否両論。<Number Web> photograph by Getty Images

勝負弱い印象がついてしまったベンゲルだが、今回のFA杯獲得はコミュニティーシールドを除くとアーセナルで通算10度目となるタイトル獲得である。

同点とされても今までのように精神面で崩れなかった。

 開始早々にアレクシス・サンチェスが決めた先制点はオフサイドとハンドの疑惑付きだが、守備が苦手なメスト・エジルでさえ、エデン・アザールへのスライディングでボールを奪取。闘争意欲が疑われた時期もあったとは思えない戦闘ぶりは、元アーセナルMFのエマニュエル・プティが「良い意味で驚いた」とコメントしていたほどだ。

 終盤、ジエゴ・コスタに同点とされても崩れずに持ち直したあたりも、今までのチームとは違っていた。失点3分後にアーロン・ラムジーが決めた勝ち越し点に絡んだのは、ベンチから送り出された直後のオリビエ・ジルーだった。

 この交代策の他にも、ペトル・チェフをベンチに置いて先発させたダビド・オスピナがビッグセーブを披露し、3バックの中央では、長期欠場明けで今季の実戦経験が40分弱だったペア・メルテザッカーが力強いブロックを繰り返すなど、随所でベンゲル采配が的中した。

 もし慣れたシステムに戻して敗れていれば、相変わらず柔軟性が乏しいと言われたに違いない。オスピナ起用もFA杯でレギュラーを任せ続けた男にこだわりすぎたと非難されただろう。だがこの勝利は「意固地」と言われてきた指揮官の欠点が「不退転」という長所と解釈できる一戦になった。

プレミア優勝、CL復帰すら難しいという声も多い。

 しかし「史上の喜び」気分にずっと浸っているわけにはいかない。ベンゲルは批判的な外野を一時的に見返したにすぎないからだ。新契約締結発表に関し、アーセナル・ファンの間では賛否が分かれたまま。

 ファンの間に共通しているのは、ベンゲルをクラブ史上最高の名将と認識しているからこそ、こそ、これ以上の非難や落胆を避けるためにFAカップ優勝を退任の花道としてもらいたかったという複雑な心境のように思えた。

 メディアでは悲観的な反応が多かった。ガリー・リネカーはBBCラジオで「来季からの2シーズンをトップ4で終えられるとは思えない」と述べたが、2004年以来となるプレミア優勝はもちろん、CL復帰すら難しいと考える識者もいる。

 その背景には、チェルシー、トッテナム、マンチェスター・シティ、リバプールの今季トップ4に加え、6位マンチェスター・ユナイテッドにも戦力アップと進化が見込まれることもあるが、ベンゲル体制継続には「停滞」の不安が付きまとう点も否めない。

【次ページ】 20年間も4位以内をキープした事実は驚異的だが。

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