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降格でもコンテ級評価の39歳監督。
マルコ・シウバは新モウリーニョか。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2017/05/21 11:30

降格でもコンテ級評価の39歳監督。マルコ・シウバは新モウリーニョか。<Number Web> photograph by AFLO

ポルトガルが生んだ名将モウリーニョ監督(右)と並び立つマルコ・シウバ監督。新たな“スペシャル・ワン”として現地でも取り上げられる機会が増えそうだ。

予算も時間も限られる中、戦力外レベルにチャンスを。

 ただし、単なる「ミニ・モウリーニョ」ではない。攻めと受け身を臨機応変に使い分ける監督という評判は、プレミアでも確認された。さすがに降格圏にあえぐハルでは手堅く行かざるを得ない試合が多かったが、残留争い直接対決のミドルズブラとの31節では、先制されても前半で3点を奪い返して逆転勝利。本人が「就任後のベストゲーム」と評する内容だった。

 また、モウリーニョが就任した際には大物獲得が“セット”になるが、シウバの場合は他クラブで力不足と判断された選手を戦力にした。今冬にポルトから呼び寄せたエバンドロはエストリル時代の愛弟子でもある。

 予算も時間も限られた中で補強した7名についても、就任前からチームスタッフと一緒に対策を練っていたという。リバプールとエバートンからレンタルで獲得したラザル・マルコビッチとウマル・ニアッセは、ハルで出場機会を掴んだ。

 この2人とともに2列目に並ぶのはレンヌから加わったカミル・グロシツキ。ミドルズブラ戦では彼らが2ゴール1アシストを記録した。また新加入のアンドレア・ラノッキアとセンターバックを組む24歳のハリー・マグワイアは、前監督のもとでは戦力として見られていなかった。

トレーニングも、ピッチ外での管理も綿密に。

 同じく前体制下では出番が限られていたMFトム・ハドルストーンは、監督交代後の変化を説明している。

「システムが何であっても、マイボールであってもなくても、自分が何をしなければならなくて、何をしてはならないのかを全員が完璧に把握しているチームになった」

 綿密な情報戦に執拗なセットプレー対策、陣形を徹底するための練習、そして映像を交えた長めの戦術ミーティング。そして基本的にはトレーニングのオフ日を設けず、練習の集合時間も以前より30分早い朝9時半に設定した。

 シウバはピッチ外でも徹底的にチームへ関与している。選手の食事管理が厳しくなり、クラブハウスでのデザートメニューからはアップルパイが消え、新鮮なフルーツが並んだ。ホームゲームでは、連帯感と集中力を高めるために午前中に集合して食事とミーティングを行い、チームバスでスタジアム入りするようになった。

 嫌がる選手がいてもよさそうだが、意欲的でカリスマ性も備えたシウバがもたらした様々なものが、ハルを変えたのは間違いない。

【次ページ】 マンU、リバプール相手に1勝1分けの好成績。

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