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再び訪れたMLB移籍の“黒船”。
NPBは不平等条約を結ぶな!

posted2017/05/18 07:00

 
再び訪れたMLB移籍の“黒船”。NPBは不平等条約を結ぶな!<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

WBC欠場、シーズン序盤での故障と厳しい時期が続いている大谷。だが、その選手としての器は海を越え、世界的評価が定まっている。

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Nanae Suzuki

 海外フリーエージェント(FA)の権利を持たない選手が大リーグに移籍の際に利用するポスティング制度について、メジャーリーグ機構(MLB)から現行制度の改定に向けた協議の申し入れがあった。

 日本野球機構(NPB)は5月8日に行われた理事会で12球団に経緯を説明。ただ、現状では米側の要求内容が明らかになっていないため「まず向こうの案を確かめてからになると思う」(井原敦事務局長)ととりあえずは静観の方向だという。

 ただ今回の改定要求は、4年前の2013年と状況が酷似している。

 4年前は楽天・田中将大投手のメジャー移籍を背景に、それまで青天井だった移籍金に制限をつけることが米側の狙いだった。

 このときは日米交渉で一度は最高入札価格と2番目の入札額の中間点で合意し、正式締結の直前までいっていた。ところが当時の選手会の顧問弁護士の“暴走”から、日本側の意見がまとめられず、その間隙を突いて一部のMLB球団に巻き返されてしまった。結果として現行の最大2000万ドル(約22億4000万円)という最高額で押し切られる形となったわけだ。

 そして状況が酷似しているというのは、今度は日本ハム・大谷翔平投手のメジャー移籍が取り沙汰される中での見直し要求だからだ。

MLBは、必ずNPBに不利な改定案を出してくるだろう。

 今回はまだ米側がどういう改定案を出してくるかは不明ではある。ただ、最近の米球界の流れからすると基本的には移籍金の削減をベースにした、日本側に不利益な改定案が出される可能性が高い。

 その時に日本側がどう対応するのか。

 焦点はむしろNPBがポスティング制度の廃止を含めて、どういう代案を出し、どういう決断をできるかにかかっているわけである。

 その決断の背景となるべきなのは、選手の利益と移籍に関わる日米両球団の利益のバランスをいかにとるかという点だろう。

【次ページ】 ポスティング制度ができた経緯を考えると……。

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