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“偉大なる長兄”の後に続く高安。
稀勢の里に寄り添い一気に大関取り! 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byNaoya Sanuki

posted2017/05/08 11:30

“偉大なる長兄”の後に続く高安。稀勢の里に寄り添い一気に大関取り!<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

「大関より、まずは優勝」と、昇進もさることながら初優勝を念頭に置いたコメントを発表している高安。

兄が、弟のさらなる昇進に太鼓判を押す理由。

 大関昇進の目安とされるのは三役で3場所合計33勝とされるが、1月場所で11勝、3月場所で12勝の星を挙げている高安のノルマは、10勝。

 当時18歳の幕内力士だった稀勢の里に憧れての入門以来、その胸にぶつかって転がされて来た。切磋琢磨し、連日胸を合わせて猛稽古を積んで来た稀勢の里が、高安にこう太鼓判を捺す。

「稽古場でも、高安は非常に強くなっています。今までにないくらい、いい。稽古場での力が出せれば」――昇進は射程圏内だと兄弟子はみているのだ。

 一方、孤独にケガと向き合う兄弟子の姿を目の当たりにし、心のうちで寄り添う高安はいう。

「ケガがあっても何も変わりなく、稽古場で同じことをしっかりコンスタントにやっている。すごく勉強になります。どんな状況でも堂々といられるような力士に、自分もなりたい」

「次は自分だ!」の気持ちで大関取りに挑む。

 互いの“進化”を肌で感じ取って来たふたりだ。普段なら唯一無二の稽古相手として、迫力充分の三番稽古を見せる兄弟子と弟弟子。しかし、稀勢の里は「まだ高安と相撲を取れる体ではない」との判断で、ひとり出稽古に赴いた。それほどに今の弟弟子の強さを体感している。

 そして、「今場所は(大関取りを)あまり意識しないよう、いつもどおりの場所のように淡々とやりたい」と冷静を装いながらも、その胸のうちは熱くたぎっている高安。昇進ノルマの2ケタ勝利は言うに及ばず、

「全勝優勝を目指したい。身近な存在が優勝して、感化され、欲も出て来ました。『次は自分だ!』という気持ちです」

 “兄”の背中を見続けて来た“弟”はいう。まるで『北斗の拳』のストーリーのごとく――兄弟弟子同士が繰り広げる闘いのドラマを、見せてくれるかもしれない。

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