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抑えて当然、リリーフはつらいよ。
それでも上原浩治は生き残る。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2017/05/06 11:30

抑えて当然、リリーフはつらいよ。それでも上原浩治は生き残る。<Number Web> photograph by Getty Images

古巣相手の登板となったレッドソックス戦では4月30日にわずか11球で1回無失点だったが、翌5月1日に3失点で今季2敗目を喫した。

上原の長所であるK/BBはMLBでも歴代最高。

 上原の長所として挙げられるK/BB(三振と四球の比率)やWHIP(1イニングあたりの被安打と与四球の数)がシーズン中に語られることは少なく、いつだって「抑えて当然」のような見方をされるし、「打たれた時に初めて注目される」因果な商売である。

 あらためて記しておくと、K/BBは奪三振率の高さと与四球率の低さを記した成績である。つまり、「守備の影響を受けずに打者をアウトに取るか、走者に出すか」という、とても純粋な投手成績だ。上原のそれは日本プロ野球で歴代最高の通算6.68だという(通算1000イニング以上)。メジャーリーグでも現在まで歴代最高の通算7.71を記録している(通算250イニング以上)。

 そういう投手がクローザーの前にいるというのは、カブスにとっては何よりの贅沢だ。

「本当にまだ、どこで投げるのかは分からないんで」

 上原は今季10試合に登板した時点で、早ければ7回に起用されている。その状況は4点勝っていようが、2点負けていようが登板している。同僚のペドロ・ストロップも早ければ6回に登板し、3点差ならば勝ち負け関係なく登板する。

 同じくジャスティン・グリムも早ければ6回に登板し、4点以上勝っていようが3点以上負けていようが登板する。昨季途中までクローザーのロンドンは、9回にも登板することが多いので少し違っているが、今のところはセーブ機会に登板することはない。彼らはクローザーのウェイド・デイビスへ継投する“セットアッパー”であり、だれか一人が必ず8回に登板するというわけではなく、今のところはその役割は分業制となっている。

「本当にまだ、どこで投げるのかは分からないんで、気持ちを続けていかないと」

 と上原。優しげな視線はそこにはなかった。出てくる言葉も、とても切実に聞こえた。

「気持ちを持ち続けるのは難しい。慣れないですね。もう、ずっと気を張って、終われば完全に気を抜いて、切り替えて。それしかないです」

【次ページ】 投手が打席に立つナ・リーグならではの難しさ。

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