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球場の大クスノキ、借景の桜島!?
熊本と鹿児島を堪能した野球ぶらり旅。 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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photograph byYasutaka Nakamizo

posted2017/04/29 11:30

球場の大クスノキ、借景の桜島!?熊本と鹿児島を堪能した野球ぶらり旅。<Number Web> photograph by Yasutaka Nakamizo

全国的には「さつま揚げ」として有名な鹿児島名物「つけ揚げ」。お酒のお供に最高です!

杉内と木佐貫が投げ合った、あの球場へ。

 今夜の第2戦が行われるのは鹿児島県立鴨池野球場だ。

 19年前、'98年夏の鹿児島県予選決勝戦であの杉内俊哉(鹿児島実業)と木佐貫洋(川内高校)が投げ合った場所。

 決勝戦は川内有利の下馬評も、鹿実は3回裏に杉内のヒットを足掛かりに木佐貫を攻め3点を先制。結局、杉内は川内打線を8安打9三振1失点に抑え、3対1で勝った鹿実が3年連続の甲子園出場を決めた。

「他の奴らとは背負っているものが違う」

 複雑な家庭環境に育った杉内は、中学生の頃から「俺はプロに行く」と周囲に公言。家族の将来は自分の左肩に懸かっているのだと。

 夢でも目標でもなく、使命。甲子園に「行きたい」じゃなく、「行かなくてはならない」。

 県内屈指の進学校で野球をする木佐貫は、その強靭なハングリー精神の前に為す術もなく敗れた。

あの伝説の投げ合いから、もう19年になるのか……。

 その杉内は'15年10月に股関節を手術、今季は2年ぶりの一軍復帰を目指す。

 木佐貫は'15年に現役引退後、古巣に戻り巨人スカウトに転身。第2の人生を歩んでいる。

 あの夏から、19年という歳月が流れたのだ。

 みんな歳を取った。

 自分も19年前の大学1年の夏休み、バックパッカーとしてタイのバンコクを歩いてた。それが今はリュックひとつで九州を旅している。思えば、遠くに来たもんだ。アンティーク調の落ち着いたホテルにチェックインすると、鹿児島中央駅に戻り、球場行きのバスに乗った。

 20分後に到着した鴨池野球場周辺の開放感のある風景には、なにか妙な違和感があった。

 そうだ、人は多くてもレプリカユニフォーム姿のファンが異様に少ない。何て言うのか、ほとんどが普通の格好で球場に来ている。

 これはこれで懐かしくて新鮮だな。

 焼そば300円、骨付きフランクフルト200円と球場グルメも安心格安価格。東京ドームの選手弁当1550円っすよ――なんて思いながらフランクフルト片手に内野席の階段を上がって行くと、目の前には桜島を望むグラウンドが広がっていた。

 思わず息を飲む。

 野球場でこれほど圧倒的な景観は見たことがない。壮大な桜島、そびえ立つ重厚な照明塔、完璧な風景だ。

 来て良かったな……心からそう思った。

【次ページ】 プロ野球は「平穏な日常」の象徴である。

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