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フェラーリ復活劇とタイヤの超進化。
F1開幕戦、新時代を凝縮した一戦に。

posted2017/04/07 08:00

 
フェラーリ復活劇とタイヤの超進化。F1開幕戦、新時代を凝縮した一戦に。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

自身通算43勝目を飾ったベッテル。やはり跳ね馬の躍動はF1全体を活気づける。

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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Hiroshi Kaneko

「今日はずっと攻め続けることができた。昨年は2周走っただけでタイヤがどんどん劣化していたけど、今年はプッシュし続けられる。だから、いつも同じポイントでブレーキングできる。だから、走っていて楽しい。それはドライバーだけでなく、マシンも同じ。いくら攻めても『まだまだ、速く走ることができるぞ!!』って言われてるみたいで、手が抜けないんだ」

 これは2017年の開幕戦オーストラリアGPで優勝したフェラーリのセバスチャン・ベッテルのレース直後のコメントだ。ベッテルの言葉が決して大げさではないことは、そのレースでの当人の走りが物語っていた。

 ベッテルは予選2番手からスタートした。序盤からポールポジションでスタートしたメルセデスAMGのルイス・ハミルトンと対等なペースで走行。そのベッテルのプレッシャーは、ハミルトンを予定よりも早くピットインさせるほど激しかった。

ハミルトンが目論んだ「アンダーカット」が通用せず。

 通常であれば先にピットインしたドライバーの方が、グリップ力がある新しいタイヤを装着するため有利となる。これがいわゆる「アンダーカット」と呼ばれる戦術で、トップを走行していたハミルトンがこのとき採った作戦だった。ところが、開幕戦ではレースがこれまでとは少し違った展開となった。

 ハミルトンのピットイン後、走り続けたベッテルのペースが落ちなかったのである。この結果、ハミルトンが目論んでいたアンダーカットは成功せず、6周後にピットインしたベッテルに逆転を許してしまった。

 もちろん、この逆転劇にはハミルトンがピットアウトした直後に、ペースがやや遅いレッドブルのマックス・フェルスタッペンに引っかかる不運があったことも大きく関係していた。

 それでも昨年までなら、タイヤを履き替えたばかりのハミルトンは簡単にオーバーテイクしていたはず。それができなかったのはベッテルだけでなく、フェルスタッペンのタイヤもまた「まだまだ、速く走ることができるぞ!!」と叫び続けていたからだろう。

【次ページ】 タイヤ性能が増し、コーナーでは20~30kmアップ。

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