泣きじゃくる清原を一喝した辻の目にも……。

　辻は'87年日本シリーズの名場面を回想。

　この試合に勝てば日本一という第6戦の9回二死、セカンドを守っていたらどこからかしゃくりあげて泣く声が聞こえてきた。ふと隣のファーストを見ると、清原が真っ赤な目をして泣いている。思わず駆け寄り、その顔を見ないようにして肩を叩き「おまえ、何やってんだ。試合が終わってから泣け！」とわざと叱る辻。なぜなら顔をのぞきこみ下手に励ましの言葉をかけたら、自分も泣いてしまいそうだったからだ。まだ「番長」ではなく、愛すべき「弟」だった清原の姿がそこにある。伊東の「ジャイアンツ時代のキヨほど、“ライオンズ魂”が感じられた選手はいませんでした」という言葉はなによりも優しく胸に響く。

　あの栄光の日々から数十年、ともに戦った仲間がペナントを争う敵になった。

　おまえだけには負けたくない！　ところであいつは元気にしてるのだろうか？　野球本から読み解く、それぞれの思いを乗せて何十年も続く人間模様は、まるで先が読めない上質な連続ドラマだ。

　プロ野球とは、永久に終わらない連ドラなのである。

　今年もまたペナントレースが開幕する。