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甲子園にも球数制限を設けるべき。
斎藤佑樹、太田幸司の頃とは違う。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byTakashi Shimizu

posted2017/04/04 08:00

甲子園にも球数制限を設けるべき。斎藤佑樹、太田幸司の頃とは違う。<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

延長再試合は、甲子園のドラマの1つの頂点である。しかし、投手にかかる負担を考えれば、手放しで賞賛もできない。

球数制限が実施されれば、さらに私立有利にはなるが。

 三浦の“力投”によって「高校野球に球数制限は必要か」という議論が再び沸き起こることとなった。「球数は監督の判断に任せる」という意見もあるが、私はルールとして球数制限を実施するべきだと思う。

「投手を守る」というのが最大の理由である。野球は少年野球から始まり中学、高校、大学、社会人、プロと段階的にステップアップする仕組みがあるので、高校野球でキャリアを完成させる必要がない。高校野球、大学野球なりの完成度をめざし、その選手の実力に応じて社会人、プロ野球、メジャーリーグでの完成をめざしていくのが正しい道だと思う。

 もし球数制限が実施されれば、各高校は最低でも3人くらいの投手を用意しなければならない。素質ある中学球児を集めることができるのは公立より私立なので、球数制限の導入によってさらに私立有利の状況が出来上がってしまう。これが高野連(日本高等学校野球連盟)には痛し痒しである。

プロアマの観点から見れば、球界に大きな実りがある。

 21世紀枠の選考を見ればわかるように、高野連は公立が好きだ。「文武両道」を標榜する高野連が公立を後押ししたい気持ちはわかる。しかし、選手集めに制約のある公立高が最低でも3人の(それなりのレベルの)投手を用意するのは大変である。それがあるから高野連は投手の球数制限に踏み込めないのではないか。

 プロアマを含めた観点から見れば、投手の球数制限は日本の野球界に大きな実りをもたらすだろう。1人のエースを押し立てて戦う現在の高校野球では、2番手以降の控え投手の出番は非常に少ない。つまり試合を通して成長していく、というプロセスを踏むのが今の高校野球では難しい。

 選抜大会中に、プロ野球のスカウトと球数制限の話になったとき、スカウト氏は「そうなったら今よりはるかにいいピッチャーが表に出てきますよ」と断言した。酷使を強いられるエースの負担が減り、さらに2番手以降が実戦を通して成長していくことができるのである。

【次ページ】 公立を保護するのか、投手を保護するのか。

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