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<マドリード・ダービー展望>
ジダンとシメオネ、愛すべき2人のアイコン。

posted2017/03/30 12:00

 
4月23日のクラシコ前の大一番、勝つのはどちらだ。

4月23日のクラシコ前の大一番、勝つのはどちらだ。

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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Getty Images

スペインの首都を2つに割る一戦が目前に迫った。両指揮官の激突はこれで見納めとなるのか。

 3月上旬、ジネディーヌ・ジダンの大腿部を間近で目にした。

 バスク地方の山あい、エイバルの小さなスタジアムの裏口でのことだ。収容数わずか6000人のスタジアムには、チームバスまで通じる、選手や監督専用の通路などという気の利いたものは、もちろんない。

 試合後、ジダンはスタジアムの裏からバスへと続く、崩れかけたコンクリートの階段を上っていった。太い腿、その筋肉はまるで衰えていない。細身のスーツははち切れんばかりで、姿勢もアスリートのそれだ。ベテラン選手と言っても十分通用するだろう。彼よりも体型の崩れかけた現役選手など、英国あたりにはたくさんいる。

 見た目だけじゃなく、技術も落ちていない。時々、選手にまじって、ロンド(ボール回し)や紅白戦に参加していて、びっくりするくらいのテクニックや身のこなしを披露してくれる。人気が出ないわけはない。

 やがて階段を上りきったジダンがファンの前に姿をあらわした。盛大な歓声は、その日プレーしたどの選手へかけられたものよりも大きかった。

心が折れかけたシメオネを目にした時……。

 ビセンテ・カルデロンに響く“チョロ”へのチャントは、愛に満ち溢れている。

 ディエゴ・シメオネはアトレティコのサポーターにとってカリスマ的な存在だ。彼ほどファンを味方につけようとする監督はいない。ピッチに背を向け、スタンドに向かって手を叩く。スタジアムはひとつになる。チームのスタイル、熱と激しさが混ざりあうサッカーは、指揮官そのものだ。

 それでも一度だけ、心が折れかけたシメオネを目にした。昨季最後の試合の会見でのこと、彼は覇気のない声を絞り出した。

「今後どうするか、考えなければ」

 視線は一点を見つめていた。初めて目にした弱気なシメオネの姿。それはチャンピオンズリーグ決勝、敗れた相手はレアルだ。

 動いたのは、普段はシメオネに鼓舞される側のサポーターだった。どこからともなく「チョロ、残ってくれ」との声があがり、それはキャンペーンになった。#choloquedateはSNSを席巻し、スタジアムに「残ってくれ、ここは君のホームじゃないか」という横断幕が掲げられた。それを目にしたのだろう。数週間後に現れたシメオネは、普段のやる気に満ち溢れていた。

【次ページ】 選手時代に対戦した、2人の光景を思い出す。

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