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アロンソのホンダ批判は正当なのか。
マクラーレンの車体も問題が山積。

posted2017/03/24 08:00

 
アロンソのホンダ批判は正当なのか。マクラーレンの車体も問題が山積。<Number Web> photograph by AFLO

バルセロナでの合同テスト中、同僚と話し合うホンダの長谷川総責任者(右)。開幕に向けて厳しい状況を打開できるか。

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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「問題はひとつだけだ。パワーユニットだ」

 シーズン開幕へ向けて開かれた合同テストで、フェルナンド・アロンソが珍しく公然とホンダ批判を行った。

「信頼性もないし、パワーもない。僕たちはすべてのストレートで時速30km遅い」

 データ上、時速30kmというのはややオーバーな表現だが、合同テストでホンダのパワーユニットに信頼性とパワーが不足していたことは事実だ。トラブルは初日から発生。8日間で走行した周回数425周は、10チーム中最下位だった。

 昨年、信頼性を大きく向上させたホンダが、なぜ3年目になって再びトラブルに悩まされているのか。それは、今年のパワーユニットが昨年型の進化形ではなく、新しいコンセプトを導入して、「かなり攻めた開発」(長谷川祐介総責任者)で製作されたブランニュー・パワーユニットだからだ。

新技術を、昨年急遽スタートさせたホンダ。

 技術的な詳細をホンダは明らかにしていないが、それがタービュラントジェットイグニション(TJI)であることは間違いない。TJIとは、ピストン内の燃焼室の中にもうひとつ小さな副燃焼室を作り、そこで点火爆発させた炎によって主燃焼室での本爆発を起こすというシステムである。F1ではメルセデスが2014年から導入し、フェラーリ、ルノーがこれに続いた。なぜライバルたちがこの技術を導入したのか。それは従来のシステムに比べて、圧倒的に燃焼効率が高いからである。

 だが、このTJIはまだ市販車にも採用されておらず、未知の領域が大きい技術。しかも、ライバル勢が数年かけて開発しているのに対して、ホンダは昨年スタートしたばかりだ。トラブルが出るのも当然だった。

 さらに開発期間が短かったため、テストまでに完全な状態でパワーユニットを準備することができなかった。「燃焼形態に関して、まだ十分に理解していない部分がある」(長谷川総責任者)状態で、ホンダはテストに向けてパワーユニットを送り出すしかなかった。

【次ページ】 車体側のトラブルも実は頻発している……。

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