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21失点の多治見応援席は笑顔だった。
センバツ21世紀枠、なんかいいな。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2017/03/23 07:30

21失点の多治見応援席は笑顔だった。センバツ21世紀枠、なんかいいな。<Number Web> photograph by Kyodo News

大量点を奪われた多治見高校について、21世紀枠の意義を問う声もあった。しかし、そこにこそ意義がある、ともいえるのだ。

21世紀枠、なんか、いいな。

 この日、第3試合で前橋育英高(群馬)相手に大健闘した中村高(高知)には、地元からバス55台の大応援団が駆けつけたという。

 アルプスの人口密度では、中村高以上に見えた多治見高だから、もしかしたら応援バスは60台を超えたのかもしれない。

 卒業生もたくさんいたのだろうし、親戚、家族、もちろん在校生だって。しかし、その中に、「いつも見かけるあの子」の応援に、窮屈なバス移動往復10時間にも及ぶ苦行もなんのその、勇躍甲子園に駆けつけた土地の人たちも決して少なくはなかったはずだ。

 大会5日目、静岡高(静岡)との戦いに臨む不来方高(岩手)は、10人でも野球はできる、そのことを教えてくれた。

 不足は工夫を生む。

 おそらくはそのような精神で、10人でも甲子園で野球がやれることを私たちに教えてくれた。

 センバツ高校野球・21世紀枠。

 なぜか息苦しさを覚えることのある最近の高校野球、甲子園に、ホッと軽く息を吐ける一瞬を与えてくれているようにも思う。

 21世紀枠、なんか、いいな。

 この春も、センバツの取材にやって来られてよかった。甲子園はいつも何かを教えてくれる。

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多治見高校

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