市船で、鉄壁の守備を完成させたふたり。

　精神的に逞しくなった杉岡と、アジアの激戦を経験し、安定感が格段に増した原。

　彼らがCBを組み、昨季後半における市船の守備は難攻不落の砦となった。

　高校最後の大会となった高校選手権こそ、2回戦で前橋育英にPK戦の末に敗れたが（前橋育英は結局準優勝）、初戦の京都橘戦と2試合で、一度もゴールは割らせなかった。

　そして2017年春。

　それぞれがプロの舞台に羽ばたいていった。別々のチームとなった2人だが、強烈なライバル関係はユニフォームの色が変わっても、不変だった。

「向こうはJ1だし、新潟なので難しいなと思っていた」

　J2開幕戦を前日に控え、杉岡は開幕スタメンが決まっていた。だが、彼の下にニュースが飛び込んで来た。

「原輝綺、アルビレックス新潟史上初の高卒ルーキーで開幕スタメン」

　J1開幕戦はJ2開幕戦よりも1日早かった。杉岡よりも一足先に原がJ1のステージでクラブ史上初の偉業をフル出場で成し遂げたのだ。

「正直びっくりしました。まさか出るとは思っていなかったと言うか……。向こうはJ1だし、新潟なので難しいなと思っていたのが、いきなりスタメンと知って凄く驚きました。僕は開幕スタメンを控えて、ちょっと緊張していた部分もあったのですが、原が先に大きなことをやったので、すぐに『俺もやらなきゃ』という気持ちになりました」

　この言葉通り、開幕戦では3バックの左として、攻守に落ち着いたプレーを披露した杉岡。対人の強さと空中戦の強さ、そして機を見極めての攻め上がりからチャンスを作り出すなど、ルーキーとは思えない堂々たる存在感を放ち、1－0の勝利に十分貢献した。

　第2節の群馬戦でも、2試合連続スタメンを果たす。「パスを出して止まるのではなく、前に行く。この意識だった」と、スピードを緩めること無く前に出ていたことで、こぼれ球にいち早く反応。「ワンタッチ目で相手を剥がせたので、打つだけでした。狙っていた」と語ったように、鮮やかなファーストタッチによってDFをかわすと、そのままカバーのDF2人をぶち抜いて、角度の無い位置から得意の左足を一閃。鋭いライナーのボールは、ゴール右サイドネットに突き刺さった。

　高卒ルーキー第1号は、インパクト絶大の個人技によるスーパーゴールだった。

　だが、彼に浮かれる様子は一切無かった。

「もし原がJ1で試合に出ていなかったら、少し満足していた部分もあったと思うのですが、新潟で2試合連続スタメンフル出場をした原の存在があるからこそ、全然満足していません」

　結局、杉岡はまったく慢心することもないまま、J開幕から3試合連続スタメンフル出場を果たすこととなった。

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