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「四球は恥」という神経質を捨てろ。
権藤博がWBCに用意する異端投球術。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKyodo News

posted2017/02/09 12:00

「四球は恥」という神経質を捨てろ。権藤博がWBCに用意する異端投球術。<Number Web> photograph by Kyodo News

武田翔太の趣味は将棋。駆け引きや緩急で打者を翻弄する投球スタイルも納得の、頭脳派投手なのだ。

四球の後に、簡単にストライクを投げるのが一番ダメ。

――監督や投手コーチは、ムダな四球を一番嫌がる。それが日本の野球ですよね。

「いや、一番ダメなのはフォアボールを出して、そこで方向転換してストライクを取りに行くことでしょう。WBCで対戦するバッターは、それこそ何でも振ってくるようなタイプが多いわけでしょ。だからこれだけが一番いかん! むしろフォアボールはいいんです。フォアボール出して、次でアウトを取って、またフォアボール出して、アウトを取って……。それでいいんです。立派なもんだって。それくらいの確率で向かっていったら、逆に絶対に抑えられるっていう感覚を選手には持ってもらいたいんですよね。その話は2月1日からキャンプを回っている間に、投手陣にはずっと話しているんです」

――神経質になりすぎるな、と……。

「みんなジャパンのメンバーになると、フォアボールを出したらいかんと思うんですよ。恥だ、と。日本の恥の文化を、投手はそういうところで感じますからね。でも『フォアボールは恥じゃない! フォアボールは武器だ!』ってみんなに話しているんです。フォアボールを出したら使ってもらえなくなるんじゃないかとか、そういうのは一切、ないからと。ただ、方向転換が一番嫌なんです。フォアボール出して方向転換して、ストライクを取りにいってパカーンと食らう。それでゲームは終わっちゃいます。それだけです」

――その意識改革が重要だということですね。

「そこを変えないとダメですね。彼らはいつも頑張ろうとする。分かるんです、気持ちは。12球団から13人しか選ばれていないんですから。ただ、細かいピッチングだけはしちゃいかん。とにかく調整法はお前たちと球団に任せるけど、頭の中ではフォアボールを恐れるな、と。これが一番徹底したいことですね。このことだけは22日に合宿で集合したときのミーティングでも、改めて全員に言おうと思っています」

強化試合では、ベンチからサインを出していた!?

――大谷がいなくなり、当初の構想とは違った形で大会に臨むことになりますが……。

「なるようになる! それしかないじゃないですか。戦えるメンバーは揃ったと思っていますし、結果責任は私が持てばいいんですから。あとは彼らの特長をきちっと把握して、どう使うか。実は昨年の強化試合では、ベンチから私がサインを出していたんです。色々と見たかったから。抑えるかどうかは問題ではなかった。強化試合なんだから色々と試さないと。だからあのとき、打たれたことも全く気にしていません」

【次ページ】 気になるのは、やっぱり抑え。

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