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「オフサイド廃止案」は奇抜すぎ?
本気でそのサッカーを想像してみた。 

text by

北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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posted2017/02/09 11:00

「オフサイド廃止案」は奇抜すぎ?本気でそのサッカーを想像してみた。<Number Web> photograph by AFLO

1985年のトヨタ杯、プラティニは芸術的ボレーをオフサイド判定で取り消されると、芝生に寝転んで抗議した。廃止となれば、こんなシーンも消えるだろう。

オールコートのマンマークは、絶対疲れる。

 人についてしまえば、スペースの「大小」よりもむしろ、1対1の「優劣」が大きな問題になってくる。カバーリング専用のスイーパー(掃除人)も必要だろうか。現代の流れで言えば、GKに兼任させる選択肢もあるだろうが。

 ともかく、籠城戦よりも敵陣に近いエリアから反撃するチャンスがあるかもしれない。1対1の争いならば、“ハンドボール”よりもずっとボールを奪いやすいからだ。それでも、互いにオールコートのマンマークで戦えば、体力的な負荷は計り知れない。

先制した方が延々とキープする悪夢も。

 攻撃側と守備側と同様、強者と弱者の関係も大きく変わりそうだ。弱者はいくらマンマークで守っても、やはり自陣深く押し込まれてしまうだろう。

 こうなると、先ほど触れたように、反撃が極めて難しくなる。加えて、強者に先制されたら事実上、打つ手がなくなる。強者が広大なスペースを利用してキープに入れば、ほぼボールは取れないからだ。一か八かのプレッシングを試みれば、失点のリスクは大きくなる一方だろう。

 1対1で有利な強者が開始1分に先制し、あとはボールをキープして終了――。そんな悪夢のシナリオも考えられそうだ。もっとも、これでは観る側は退屈してしまう。仮にサッカーがハンドボールやバスケットボールに近づくなら、さらなるルール変更が必要だろう。

 例えば、攻撃時間の制限だ。時間稼ぎのキープを「強制終了」させて守備側に攻撃権を与える。守備側に不利(攻撃側に有利)な「オフサイド廃止」と引き換えというわけだ。

 守備側に有利なオフサイドは、言わば「弱者の味方」でもある。それを廃止すれば、ジャイアントキリングの起こる確率も大きく下がるだろう。他のボールゲームと比べて、はるかに番狂わせの多いサッカーの醍醐味の一つを失う恐れもある。いやいや「強い者が勝つべきだ」という向きには歓迎されるかもしれないが……。ともかく、オフサイドの廃止はアンチェロッティの指摘どおり、これまでとは全く違うスポーツへの第一歩になるだろう。

【次ページ】 150年前にオフサイドが導入された理由は……。

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