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W杯が48カ国に増えることについて、
世界最高のサッカー誌は、こう考える。 

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エリック・シャンペル

エリック・シャンペルEric Champel

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posted2017/02/01 11:00

W杯が48カ国に増えることについて、世界最高のサッカー誌は、こう考える。<Number Web> photograph by RICHARD MARTIN

前回のブラジルW杯は、スタジアムやインフラ建設の問題などこそあれ、経済的には成功した、という評価がなされているらしいが……。

トランプとプーチンが今年のスポーツ界を揺るがす!?

 クリストファー・スティールというイギリス人の情報期間の元職員が公表した文書が最近話題になっている。

 35ページからなるそのレポートは非公式ではあるものの、ドナルド・トランプ米国大統領に対するロシアの恐喝の様子が詳細に記されている。2ページ目に書かれているのが、クレムリンの工作である。そこではトランプに対し、2018年ワールドカップに関連した営利目的の不動産投資をするよう提案したと述べられている。

 1月10日、フランスとアメリカを含む19カ国のアンチドーピング機関のトップがダブリンに集まった。その会合ではロシアがドーピング問題を根本的に解決しない限り、2018年ワールドカップを含むすべての国際大会から締め出すべきだとの合意に達した。

 このふたつの情報は、直接的には何の関係もない。だがふたつを並べることで、意味が出てくるのだ。

『アラウンド・ザ・リングス』というオリンピックと各競技団体の活動を専門に扱うアメリカのサイトが、ドナルド・トランプとウラジミール・プーチンを2017年のオリンピックスポーツ界で最も影響力の強い3人のうちの2人に選んでいるのだが、その理由が良くわかる構図なのである(残るひとりは中国の習近平)。

 トランプとプーチンは、近い将来、不自然に接近するのではないか?

 そしてスポーツに関して、“新たなヤルタ協定”の議定書にサインをするのではないか?

 さらにスポーツ外交によりあらたな冷戦の始まりを回避し、世界をデタント(緊張緩和)へと導くのか……。

 極めてシリアスな仮定である。

米国はロシアのドーピングに目をつぶる可能性も。

 インファンティーノ会長就任の恩恵を最も受けたのがアメリカだった。

 2026年のワールドカップ招致に向けて、頼りになる味方を得たからである。

 48カ国に規模が拡大し、その大会規模の巨大化から開催可能な国がこれまで以上に限定されたことにより、カナダとの共催を含めたアメリカ開催の可能性をより高めることになった。

 だが、開催国を決めるのはFIFA総会であって評議会ではない。

 メキシコが立候補すれば、中南米諸国すべての支持が得られるだろう。モロッコが意志表示したら、アフリカのすべてとアジアの多くから支持されるだろう。大西洋の対岸よりもずっと近い北アフリカでの開催を、ヨーロッパの国々も喜ぶはずだ。

 2010年にカタールに敗れた屈辱を再び繰り返さないために、アメリカは多大な影響力を持つモスクワの力に頼る可能性は大いにある。

 そのためドーピング問題に目をつぶり、2018年ワールドカップのつつがない開催を願うかも知れない。

【次ページ】 FIFAから離れていったスポンサーたち。

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