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ロジャー・フェデラー、復活を語る。
「自分がこんなにテニスが好きだとは」 

text by

ヘレン・スコットスミス

ヘレン・スコットスミスHeren Scott-Smith

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2017/01/30 12:40

ロジャー・フェデラー、復活を語る。「自分がこんなにテニスが好きだとは」<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

1981年8月8日、スイス・バーゼル生まれ。怪我のため昨夏から欠場し今季開幕から復帰。185cm、85kg。

「全豪の1カ月前くらいからテニス中心の練習を」

――現在は、どのようなトレーニングを行っているのでしょう?

「物理的な治療と、膝や腹筋、臀部や大腿四頭筋などの部位の強化期間は、ほぼ終わっている。特に重要視してきたのが、左大腿四頭筋の強化。ここはケガした膝を保護するためにも、最も大切な部位だからね。

 現在は、フィットネストレーナーのピエル・パガニーニと一緒に、激しいトレーニングに挑んでいるよ。その目的は、瞬発力や跳躍力、そして持久力を上げることにある。その後は、トレーニングで強化した筋力をテニスの動きに統合していくんだ。それは常にとても重要なプロセスだけれど、僕にとっては、特別新しいことでもないかな。毎年、新シーズンへの準備を始める時にやっていることだからね。全豪オープン開幕の1カ月前くらいからは、テニス中心の練習で仕上げていくと思うよ」

 フェデラーのフィットネストレーナーであるパガニーニは、かつてはスイステニス連盟の専属トレーナーとして手腕を振るった人物であり、フェデラーを14歳の頃から指導してきた歴史がある。その20年来の盟友は、現在のフェデラーについて「肉体的にもモチベーションなどのメンタル面でも、まるで23歳の頃のようにフレッシュだ」と太鼓判を押した。

 コート上でのあまりに優雅な動きと、あらゆるショットをいとも容易く繰り出す技量のため、人々はフェデラーのことを、努力なしに超絶技巧を手にした“天才”と見てしまいがちだ。しかしフェデラーに近い人たちほど、実際の彼は想像を絶する努力家であり、無類の負けず嫌いだと口を揃える。フェデラーのそのような激しい一面は、今回のインタビュー中にも、長い休養期間をあたかもバケーションのように捉えられた時、あるいは下降したランキングに触れられた時、静かな闘志をまとった戦士の顔として浮かびあがった。

「僕の戦士的な一面を人には見せたくはない」

――テニスを休んでいる間は、家族旅行やファッションショーに行くなど、オフコートの生活を楽しんでいるようですね。

「それは、SNSなどで公開している一面しか見てないからじゃないかな。それに、1日90分以上の激しいトレーニングを禁じられた時期もあったからね。その空いた時間を利用して、子供たちと楽しい時間を過ごしていたんだ。レンツァーハイデの山小屋に行って、そのあとは、パリのファッションショーに2日間参加した。そういうオフの様子はSNSにアップしたけれど、トレーニングしている姿は見せないようにしていたんだ。僕は、自分が激しく自分を追い込んでいるところを、つまりは僕の戦士的な一面を人に見せたくはないんだ。もちろん普通の生活……例えばある日はスイスで古い友人たちと会食し、翌日はパリで仕事の関係者に会うという日々も、楽しくはあったけれどね」

【次ページ】 「スタンの全米優勝で、色々感じることもあった」

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