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筒香嘉智が野球教育に本気で参戦。
「答えを与えすぎず、考える習慣を」 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2017/01/29 08:00

筒香嘉智が野球教育に本気で参戦。「答えを与えすぎず、考える習慣を」<Number Web> photograph by Kyodo News

イベントに参加した筒香。日本を代表するスラッガーと触れ合った野球少年は屈託のない表情を浮かべていた。

試してみる、やってみる心を習慣づける。

 選手が起こすミス・失敗に対して注意するのではなく、じっと見守ることによって、選手個々がチャレンジできるよう促す。そして、その結果を選手が自分で考え、創造力を働かせて、次のプレーにつなげる。

 たとえば、ある遊撃手が三遊間のゴロを逆シングルで捕ろうとしてはじいた際、「そうじゃない、下からグラブを出せ」と言ってしまいがちなのが日本の指導だ。声色に怒気が混じることもあるだろう。

 そういった指導を受ければ、選手はグラブを下から出すようになり、一時的にミスは減るかもしれない。しかし、失敗を繰り返していくなかで選手自身が考え、グラブの出し方を探し当てるアプローチもある。それが考える力であり、創造力になるというわけである。

 まずは自分で試してみる、やってみる心を育む。そのことをジュニアの頃から習慣づけていくことで、大人になったとき、自ら考えて動ける人間を形成できると筒香は考えている。

「言わない勇気ってすごく大事だなと思います」

「言わない勇気ってすごく大事だなと思います。教えている人はすぐ良くなってほしいという想いの方が多いと思うんです。でも子どもたちのことを考えたら、いま、勝ったとか、負けたとか、すぐ良くなることよりも、将来にどうなっているかの方が圧倒的に大事になってくると思う。観察力、忍耐力を大事にして、一歩引いたところから見てほしいと思います」

 これらの考えは、堺ビッグボーイズ中学部がこの7年間で積み上げてきた指導のあり方でもある。たくさんの人物がこのクラブに関わり、チームを進歩・成長させてきた。2学年で80人超の部員が所属しているのは、その方針に野球の楽しさを感じていることと無縁ではないはずだ。

 筒香は自身の経験と、堺ビッグボーイズが目指していることを重ね合わせ、ひいては野球界のためと考え、自らの経験を下の世代に還元する意味でアドバイザーの役に就いたのである。

【次ページ】 「野球が将来に繋がらないなら、なくなればいい」

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