埼玉では優勝、しかし昇格はならず。

　来年度のプリンスリーグ関東昇格枠を懸けて戦うこの大会で、埼玉県リーグ1部を制した昌平は初戦を勝利すると、千葉県リーグ1部覇者のジェフユナイテッド市原・千葉U-18との昇格決定戦に臨んだ。

　地元とあって、多くのジェフサポーターが詰めかけるアウェーの雰囲気の中、昌平は終始主導権を握った。針谷と松本のコンビネーションはこの日も光っていた。だが、度重なる決定機もことごとく決めきれず、スコアレスのまま時間が過ぎていった。

　結果、90分間でゴールを奪えず、0－0のまま延長戦へ。延長戦でもチャンスを決めきれず、終了間際に失点を喫して敗戦。2人の高校サッカーはプリンスリーグ関東昇格をもたらせずに幕を閉じた。

「高校最後の試合でこういう試合をしてしまい、凄く悔しい。終わり方が悪すぎた」（針谷）

「高校選手権がまだ控えているのに、僕らはそれに出られない。だからこそ、最後は勝って終わりたかった」（松本）

Jリーグを経て、いつか再び同じユニフォームを。

　それでも、次なるステージとなるJリーグの舞台が待っている。「プロではバイタルエリアでどんどん仕掛けて、テンポよくシュートまで持って行ける選手になりたい。1年目は全力で追う立場なので、思い切っていろんなことを吸収していきたいと思います」と松本が語れば、「自分みたいな（細い）体型の選手はたくさんいると思うので、“こういう体型でもプロになれる”と言うことを見てもらいたい。やっぱり周りからは“弱い”と言われがちなので、フィジカルだけじゃないということを見せたいし、守備も技術があれば出来る」と針谷も決意を語った。

　スタンドの無い天然芝ピッチで流した2人の涙。この涙を胸に、針谷岳晃と松本泰志のホットラインは、後悔という名のバネを力に次なるステージに向けて静かにリスタートを切った。

　再び、同じユニフォームを着て“最高のセッション”を披露するその日まで。