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「心のせいにして技術から逃げてた」
10年目・石川遼が向き合う“悪癖”。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2017/01/25 11:00

「心のせいにして技術から逃げてた」10年目・石川遼が向き合う“悪癖”。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

衝撃的なプロデビューから約9年を経たとはいえ、石川はまだ25歳。プロゴルファーとして脂の乗ってくる年齢である。

精度の低さの原因は、スイングの根本を揺るがした。

 短い日本でのオフを経て、石川はトップ選手との技術差を生む悪癖をひとつ発見した。それは「スイング軌道の安定感。自分は大きくない体でボールを飛ばすために、そこを疎かにしてきた」ことだという。

 アメリカツアーにおいても、石川は飛距離が出ない選手ではないが、問題は精度の低さにある。その原因はというと、ある意味で、石川自身のスイングの根本を揺るがすものだった。安定性のあるプレーヤーと比較して違ったのは、「フェースローテーションの大きさ」だという。

 つまり、クラブを振り上げてボールを打ち抜き、フィニッシュに至るまでに、クラブのネック部分を中心にフェース面が開閉する角度が、他選手に比べて大きいということ。ヘッドを大きく、鋭く回転させることで、ボールに強いパワーを伝えてきた。

1発の飛びはあっても、100発打つともろさが出る。

 ただ、この打法はインパクトの瞬間の形が安定せず、「曲がる」リスクと常に隣り合わせでもある。一度のミスで大トラブルを招き、好ラウンドが暗転することが何度もあった。

「僕は“そこ”に頼ってボールを飛ばしてきたんです。例えば……フォロースルー(ボールを打ったあと)で、(クラブ)フェース面が真下を向くくらいに、手首や腕でクラブを返しているときもあった。体全体を使って打つ選手は、“斜め横”までしか向いていない。ローテーションを使えば使うほど、1発の飛びはあるけれど、それを100発続けて打った時にもろさが出る」

 ナーバスな状況でも、ミスを最小限に抑えられるスイングづくりが急務と語る。「4日間72ホールを回るためのパフォーマンスを向上させないといけない。10球に1球の精度では戦えない」と言った。

 目にした多くの選手の中にはもちろん、紛れもなくトップレベルで戦う松山英樹もいる。上記の意味では、松山のスイングは石川とは対極といえるほど、フェースローテーションが少ないロールモデルだといえる。

【次ページ】 「手が返ってばかりで、全然体が使えてないじゃん」

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石川遼
松山英樹

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