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無敗の女王・KANAが負けた……。
それでもKrushが目指す本物の価値。

posted2017/01/21 08:00

 
無敗の女王・KANAが負けた……。それでもKrushが目指す本物の価値。<Number Web> photograph by Takao Masaki

KANA(左)と同い年のヘウヘス(右)は24歳のオランダ人。体格もほとんど同じで、これからも良きライバルとして活躍しそうである。

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Takao Masaki

 1月15日の後楽園ホール大会は、立ち技格闘技イベントKrushの新たなステップとなるものだった。

 この日のメインイベントはKANAvs.メロニー・ヘウヘスの女子タイトルマッチ。女子の試合がメイン(最終試合)となるのは、Krushでは初めてのことだ。

 ダブルメインの1試合目という扱いなら、これまでにもあった。だが、チャンピオンのKANAはそれでよしとしなかった。

 女子でも面白い試合をすれば大会の“トリ”が務まるし、自分はそれだけの闘いができる。彼女はそう信じてメイン出場をアピールし、ファンもそれに疑問を抱かなかった。

 その経歴は、まさに破格だ。

 プロデビューが2015年9月だから、キャリアは1年半足らず。しかし初戦、2戦目ともにKO勝利で飾った時点で“モノが違う”ことははっきりしていた。

「チャンピオンになるためにプロになりました」という言葉を現実にしたのは4戦目のこと。相手は女子キックの老舗・J-GIRLSの看板選手で豊富な戦績を誇る紅絹だったから、単なる戴冠ではなく“本物の証明”でもあった。

 パンチでも蹴りでも倒せる攻撃力に加え、ここぞという場面でハイキックを繰り出す勝負勘も持っている。そして何より、KO勝ちでなければ満足できないという高いモチベーション、プロ意識。確かにKANAは、他のどの選手にも負けない“Krushらしい選手”なのだった。

キャリア31戦のベテランを起用したが……。

 メイン登場に加えてKANAがもう1つ望んだのは、欧米の強豪選手との対戦だった。

 Krush王座は国際タイトルであり、外国人王者もいる。メインイベンターとしては避けて通れない道だ。主催者側も“KANAの相手役”ではなく、Krushのタイトルを争うにふさわしい選手を選考。

 そこで白羽の矢が立ったのが、オランダで数多くの好戦的ファイターを輩出してきたマイクスジムのメロニーだった。

 7戦目のKANAに対し、メロニーはキャリア31戦。ボクシングやMMAの試合にも出ているという。

【次ページ】 予想を完全に超えていた、メロニーの強さ。

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