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NBAを目指した日本人が感じた事。
「上下関係や選手の萎縮が無い」 

text by

林壮一

林壮一Soichi Hayashi Sr.

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photograph byAFLO

posted2017/01/25 08:00

NBAを目指した日本人が感じた事。「上下関係や選手の萎縮が無い」<Number Web> photograph by AFLO

合理的なアメリカスポーツの世界で、競技力を評価される前提に学力があるという事実は興味深い。

二軍の選手たちが出場するためのリーグ戦が存在する。

 ハグ・ハイスクールの男子バスケットボール部は、毎年、入部希望者100名がトライアウトを受ける。一軍の合格者は、およそ20名。その下のレベルの15名で二軍を構成する。つまり、100人中、合格者は35名なのだ。新入生は無条件で入部が認められるが、フレッシュマンの試合にしか出場できない。一年生は例年、30名ほどが入団している。

 1年目に活躍した選手でも、2年目からは約100名の入部希望者として、一軍用のトライアウトを受験しなければならない。中山は渡米から2カ月後に一軍のトライアウトを受け、初年度は二軍選手としてプレーした。2年目、3年目は、一軍のレギュラーを掴んだ。

 シーズンが始まると1~2週間のキャンプ期間があり、3試合ほど練習試合をこなして、一軍のリーグ戦、二軍のリーグ戦、フレッシュマンのリーグ戦と3つに分かれた公式戦がそれぞれスタートする。毎シーズン、全てのカテゴリーで、およそ40試合が組まれる。

 中山がハグ・ハイスクールに在籍中、何度もアーモン・ジョンソンが母校を訪れ、後輩たちの練習に付き合ってくれた。

「楽しかったですね。結構、僕を褒めてくれました。皆、モチベーションがマックスになりましたよ。生でNBA選手が見られて、一緒にプレーできるんですから。

 多少はアーモン・ジョンソンに喰らいついていけましたが、身体能力が違いました。僕は必死で、向こうは余裕たっぷりでしたし(笑)」

 中山は、コーチのアドバイス通り“感じてプレーすること”を意識しながら、肉体改造に取り組んだ。そうしなければ、とても通用しなかったからだ。

「渡米した時、僕は身長が170センチ弱で、体重も60キロ弱。チーム1のチビでした。今は175センチ、75キロくらいですが、それでも体が無いので、とにかく筋トレをやりましたね。体力コーチがメニューを作ってくれ、肩周りと首を中心に鍛えました。ドライブやディフェンスで相手にぶつかった際、フィジカルで負けない肉体を築くためです」

評定平均が2.0を下回ると、バスケットが続けられない。

 2年目は一軍のポイントガード、3年目は同じくトップチームのシューティングガードとして公式戦に出続けた彼は、バスケットボール推薦でフェザー・リバー・カレッジに入学した。

「高校もカレッジも、学業を疎かにしないルールが厳しかったです。高校時代は評定平均であるGPAが2.0を下回ると、どんなに素晴らしい選手でもバスケットボールを続けることができなくなります。一軍のスターティングに選ばれている選手が消えていくこともありました。

 ハグ・ハイスクールもAAU(全米体育協会)の規定どおり2.0が基準値でしたよ。Aが4、Bが3、Cが2、Dが1で、単位を取れないのがFです。2.0を下回ってしまった場合に加え、1つでもFのある選手は、やはり登録を抹消されます」

【次ページ】 推薦で入学した大学でも、学業成績をコーチに報告。

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中山政希

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