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F1最終戦で勃発したハミルトン造反。
チームの戦略介入、やりすぎの域?

posted2016/12/25 11:00

 
F1最終戦で勃発したハミルトン造反。チームの戦略介入、やりすぎの域?<Number Web> photograph by Getty Images

ハミルトン(44番)が見せた選手権制覇への執念。そこには戦略を超えた人間としてのパッションがある。

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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 メルセデスAMGのチームメート同士でタイトルを賭けて争われた2016年の最終戦アブダビGPは、近年のF1を象徴するようなレースとなった。それは、チームが立てた戦略によって、ドライバーがコントロールされようとしていたからである。

 最終戦を迎えて、ポイントリーダーのニコ・ロズベルグと選手権2位のルイス・ハミルトンとの差は12点。予選でポールポジションを獲得したハミルトンが優勝しても、予選で2位だったロズベルグが3位以内でフィニッシュすれば、ロズベルグが逃げ切りでチャンピオンとなる。

 そのため、ポールポジションからスタートしたハミルトンは、レースを意図的にスローペースにして、2番手で追走するロズベルグの背後にライバルチームのマシンを接近させ、ロズベルグに間接的にプレッシャーを与えるという戦術を採った。

メルセデスの哲学は、常に最大限の結果を得ること。

 しかし、チームはハミルトンが選択した戦い方を良しとしなかった。メルセデスAMGでチーフレースストラテジストを務めるジェームス・ヴァレスはこう説明する。

「われわれのレース・フィロソフィーは、常に最大限の結果を得ること。つまり、フロントロウから無難にスタートを切ったアブダビGPでは、1-2フィニッシュさせることだった」

 現在のF1はレース中のタイヤの性能劣化が大きいため、同じピットストップ回数なら、相手よりも先にピットインして新しいタイヤに交換したほうが、後でピットインしたライバルよりも、レースで有利になるケースが多い。いわゆるアンダーカットという戦法である。

 しかも、ピットストップ作業は1チーム1台ずつしか行えない。さらにメルセデスAMGでは「ピットストップの優先権はレース中に前を走っているドライバーにある」(ヴァレス)ので、トップを走行していたハミルトンがピットインしている間は、ロズベルグはコースにとどまらざるを得ない。

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