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松山英樹が石川遼に「行っちゃえ!」。
2人がゴルフ少年に戻っていた4日間。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAP/AFLO

posted2016/12/15 08:00

松山英樹が石川遼に「行っちゃえ!」。2人がゴルフ少年に戻っていた4日間。<Number Web> photograph by AP/AFLO

周囲は松山英樹と石川遼をライバル扱いしたがるが、それ以上に2人は同じ道を歩む「同志」なのだ。

石川にとっては、松山との差を感じる4日間だった。

 こんなひと時も、そして実際に力を合わせてコースで戦う上でも、2人は、それぞれがいま置かれている境遇の差を考えることはない。

 今回のタッグは、世界ランクで日本勢最上位にいる松山が、夏場に腰椎の故障から復帰した石川を指名して誕生した。ダブルス戦で行われた戦いは6位で終戦。直近4試合で3勝を挙げてきた松山は、今大会で突如パッティングの不振に陥り、石川は序盤でショットの不安定さを露呈した。互いに本調子でない状態でも上位争いを演じる日本チームの地力は称えられたが、優勝を目標にしてきた両者にしてみれば、満足いくはずがなかった。

 2人は互いに、レベルアップを誓いコースを去った。同じ悔しさを噛み締めながら。

 とはいえ現在、松山と石川の間には、近年の実績面で大きな差異があるのを忘れてはならない。石川からすれば、隣の松山との力の差も肌で感じる4日間になったのである。

 松山の世界ランキング6位(当時)に対して、石川は日本勢5番手の98位である。7月に復帰した直後に174位まで落ち込んでいたのを戻したとはいえ、松山がいる世界のトップグループには遠く及ばない。

実は、石川の方が上の技術もたくさんある。

 しかし2人の練習を眺めていれば、ひとつひとつの技術で石川が松山にすべて劣っているわけではないと、分かる。パー5でフェアウェイから、向かい風をものともしないウッドでの強弾道で松山がグリーン近くまで運んだかと思えば、石川はさらに低いドローボールを披露して2オンさせた。深いバンカーを一緒にチェックしながら、松山が「遼で寄らないなら無理。ここには入れちゃダメだ」と、つぶやく姿もあった。

 ただし、ゴルフはそれらを繋ぎ合わせてスコアを作るゲーム。技が多いのと強いのは同義ではない。だからこそ、局面での物事の捉え方や選択がキャリアまでも左右する。

【次ページ】 30秒以上迷ってから、ドライバーを振りぬいた石川。

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