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FAで補強すると成績はどうなるか。
過去のデータで見ると来季巨人は? 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byKyodo News

posted2016/12/09 11:00

FAで補強すると成績はどうなるか。過去のデータで見ると来季巨人は?<Number Web> photograph by Kyodo News

久々に「何でも欲しがる巨人」が帰ってきた。危機感が生んだ大補強は、果たして来季実を結ぶだろうか。

巨人は移籍選手の成績が持続せず、阪神はさらに悪い。

 '16年はポスティングシステムを活用してメジャーに挑戦した前田健太の穴を黒田博樹、ジョンソン、野村祐輔で埋めた広島が25年ぶりの優勝を遂げた。エースがいなくなっても、準備をしっかりしていれば大きな穴にならないという好例である。

 さて、この19例のうち巨人が獲得側に回っているのが9例あり、続いてソフトバンク・ダイエーが3例、阪神、中日が2例と続く。FAの主役は今も昔も巨人だが、資金を投下している割に見返りは少ない。

 9例中、優勝は4回(同年に移籍した杉内と村田で1回とカウント)。優勝の確率は5割弱と高いが、強さと移籍選手の好成績が持続しないのが特徴。ファンやマスコミからのプレッシャーが強い巨人でプレーすることの難しさもあるが、ピークを前球団で迎えていることも見逃せない。

 巨人とともにFA補強をしているのが阪神で、こちらも実はあまり機能していない。この19例中では紹介していないが、石嶺和彦('94年オリックス)、山沖之彦('95年オリックス)、星野伸之('00年オリックス)、片岡篤史('02年日本ハム)、小林宏之('11年ロッテ)で失敗している。これらは移籍後の成績が極端に悪いので、データに加えなかった。金本、新井が数少ない実りだったことがわかる。

 巨人はFAの成功確率が阪神にくらべて高いが、移籍選手の巨人での通算成績はパッとしない。1シーズン平均に換算した成績は次の通りだ。

<野手>
落合博満(3年)打率.296、安打121、本塁打18、打点73
広沢克美(5年)打率.259、安打59、本塁打11、打点36
清原和博(9年)打率.266、安打80、本塁打21、打点64
江藤智(6年)打率.256、安打78、本塁打17、打点49
小久保裕紀(無償トレード/3年)打率.287、安打124、本塁打31、打点79
小笠原道大(7年)打率.296、安打106、本塁打20、打点59
村田修一(5年)打率.276、安打133、本塁打19、打点67

<投手>
川口和久(4年)21試合、2勝3敗、防御率4.32
杉内俊哉(5年)18試合、8勝4敗、防御率3.03

 巨人のFAは獲得する選手の実質的な貢献より、獲得する選手が流出することによる移籍前球団の戦力低下を狙っているように見える。もちろん、こういうやり方でチームが本当に強くなるとは思えない。

【次ページ】 選手を出した球団、入った球団の成績をまとめると。

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小笠原道大
駒田徳広
落合博満
読売ジャイアンツ
吉川光夫
石川慎吾
山口俊
森福允彦
ケーシー・マギー
陽岱鋼

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