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ファジアーノのDNAが花開いた瞬間。
勝ち点差19を覆した「最後の5分」。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2016/11/28 17:00

ファジアーノのDNAが花開いた瞬間。勝ち点差19を覆した「最後の5分」。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

下馬評では不利と言われながらプレーオフ決勝に進んだファジアーノ岡山。シーズン6位からの逆転昇格なるか。

先制するも、地力に勝る松本山雅に追いつかれる展開。

 冷たい雨が緑色の芝生を色濃くする一戦は、23分に動く。ファジアーノが動かした。

 自陣深くから最前線へ蹴り出したボールを、1トップの赤嶺真吾がヘディングで後方へ流す。2シャドーの一角を担う押谷祐樹がいち早く反応し、相手DFの追走を許さずにゴール左へ蹴り込んだ。

「押し込んでくる相手の後ろ側を取ることができればと思っていて、狙いどおりに取ってくれた」と長澤監督が振り返ったように、シンプルでも明確な意図が先制点に結びついた。

 前半はそのまま1-0で終了する。ただ、リーグ戦での松本山雅は前半よりも後半の得点が多い。時間帯別の得点分布では、75分以降に最多のゴールを記録している。ロッカールームへ戻ってきた選手たちに、長澤監督は「勝負はここから。このままではいかない。強い意思が必要。地道にやり続けること」と話した。

「同点にされても焦るな」とも伝えた。

 果たして、指揮官の予想は現実となる。74分、松本山雅が得意とするCKから、ゴールをこじ開けられてしまうのだ。

最後の5分に総攻撃をかける、というプラン。

 獣のような獰猛さで襲いかかってきた松本山雅の選手たちは、同点へ持ち込んだことで失点をしない戦いへシフトしていく。ボールを握れるようになったファジアーノだが、決定的なシーンは作り出せない。

 残り時間は確実に少なくなっていく。プレーオフからの敗退が近づいていく。ファジアーノの選手たちが、胸を焼かれるような思いを抱いてもおかしくない。ところが、彼らの心に絶望は忍び込まない。

 キャプテンの岩政大樹は言う。

「試合の終盤までイーブンでいくことが最低限の目標だったので、同点になってもそこに戻っただけだった。慌てずに残り5分になるまでイーブンでいき、そこから総攻撃に出てチャンスは作れるだろうということに、みんなの頭を揃えた」

【次ページ】 赤嶺がたった一度だけ手にしたスペースと時間。

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