書店員のスポーツ本探訪BACK NUMBER

黒田博樹の野球観、人生観を知る。
「決めて断つ」ことで得た正解。

posted2016/11/29 17:00

 
「男気」というキャッチーな言葉で語られることが多いが、黒田の本質はもっと奥深いところにある。

「男気」というキャッチーな言葉で語られることが多いが、黒田の本質はもっと奥深いところにある。

text by

濱口陽輔

濱口陽輔Yosuke Hamaguchi

PROFILE

photograph by

Wataru Sato

 圧倒的強さで25年ぶりに2016年のセ・リーグのペナントレースを制した広島カープ。衝撃的なニュースが飛び込んできたのはクライマックスシリーズを勝ち上がり日本シリーズに挑むタイミングだった。幼少期よりカープファンの私はもちろんのこと野球界、さらにはスポーツ界全体にまで衝撃が走ったのではないかと思う。

「黒田博樹引退」

 ファンの中では毎年気を揉んではいたものの、現実となれば感謝と寂しさが同時に来るような感覚だった。

 黒田博樹の現役生活最後の決断。現役引退を「決めて」愛するカープを「断つ」事を決めたのである。2012年に発行された単行本に、カープ復帰を決断するエピソードを含めた追加34ページが加わった文庫版である。

何かを断つ覚悟がないと、決断はいい方向に行かない。

 決断とは聞き慣れた言葉であるが、黒田はこのように捉えている。

<「決めて断つ」と書くけれど、実際僕は、そのくらい重いものだと思っている。何かを決めることには何かを断つ覚悟が必要だし、それがなければその決断はいい方向に行かないだろう。これまでもそう思っていろいろな「決断」をしてきたつもりだ>

 これほどの覚悟を持ってマウンドに上がる姿を見続けてきたからこそ黒田博樹という投手に魅了されているんだと感じる。

 自身の人生を振り返り、補欠だった上宮高校時代に始まり、頭角を現すことになった専修大学時代。プロ1年目の時は二軍の試合で1イニングで10点も取られたルーキー時代。厳しい経験をしたもののシーズン途中から一軍ローテーションに入り6勝をあげた。

 2年目では憧れの世界への安心感に加えて、1年目でそれなりの成績を残せたことで天狗になっていたと言う。しかし2年目はほぼケガで棒に振り、3年目は5勝止まりで防御率も納得いく数字ではなかった。

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