錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

同世代ラオニッチ、チリッチが躍進。
“安定した錦織”から脱皮すべき時。

posted2016/11/24 11:45

 
同世代ラオニッチ、チリッチが躍進。“安定した錦織”から脱皮すべき時。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

世界ベスト8だけが出場できるファイナルズに3年連続で出場した錦織。これ以上の活躍は世界王者レベルということになるが……。

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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Hiromasa Mano

 ハリウッド映画のようなクライマックス――。

 そんなふうに人々の感嘆を誘った今年のツアーファイナルズ。

 アンディ・マレーとノバク・ジョコビッチのトップ2対決で、優勝したほうが今シーズンのナンバーワン。年間王者の座がシーズン最後の最後の一戦で決するというシチュエーションは、ATPがランキングシステムを導入した1973年以来初めてのことだった。

 この5カ月間、宿命のライバルであるジョコビッチと一度も直接対決することなく勝ち星を重ね、不調のジョコビッチから1位の座を奪ったマレーが、シーズン最後の一戦で旧王者を破って新王者の力と地位を証明する――これぞ完成されたシナリオだった。

 しかし、その出来すぎたシナリオに隠れたもう1つの〈ライバル争い〉が、来年のツアーを占う重要な意味を持っていたと思う。いわゆる〈錦織世代〉の戦いだ。

チリッチ、ラオニッチらと新世代を築きつつある錦織。

 1年前、錦織はラウンドロビンで敗れ去りながらも、どこか晴れ晴れとした表情でこう語ったものだ。

「ラオニッチやチリッチとか去年(2014年)出たメンツが出られない中で、自分が安定して結果を出せたことは評価できる」

 錦織にとって1つ年上のチリッチと1つ下のラオニッチは、同世代ライバルとしての関係をメディアにも煽られて、多少は意識する存在なのである。そのミロシュ・ラオニッチとマリン・チリッチが今年、2年ぶりにこの最終戦に戻って来た。

 チリッチと錦織はラウンドロビンで同じグループになったが、両者が対戦するときにはすでに錦織が準決勝進出を決めており、チリッチはラウンドロビン敗退が決まっていた。もう一方のグループからはラオニッチが2勝1敗で準決勝へ進出。錦織はジョコビッチ、ラオニッチはマレー――いずれも今季5連敗している相手に挑戦するという興味深い構図が出来上がっていたのだ。

【次ページ】 マレーとジョコビッチの世代を押しのける役割として。

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