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本田圭佑が窮地で得た新スタイル。
「試したいこと」の答えを聞いた。
 

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/11/17 12:10

本田圭佑が窮地で得た新スタイル。「試したいこと」の答えを聞いた。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

中央に入ってくるのは本田圭佑の悪癖と言われている。しかし、彼が輝くのが中央であることも間違いないのだ。

本田の「試したいこと」が浮かび上がってきた。

 そして27分、大迫の落としを受けた本田が前方をルックアップ。左サイドからゴール前に動き出していた齋藤学を見逃さず、浮き玉のスルーパスを送った。ゴールには至らなかったが、“パサー”本田の能力が発揮された瞬間だった。

 さらに42分、今度は清武が右ワイドに移り、本田が中央に位置した場面。ボールを持った清武が中央にパスを送ると、山口が軽くワンタッチ触れて、本田へ。DF2人に囲まれながらも体を前に向けた本田はタメを作り、右から走ってきた清武にリターン。最後は清武がゴール前の大迫に渡し、美しいゴールが決まった。

 本田はこのシーンについて、手応えを持っている。

「あそこは、僕が元々中にいた。ああいうシーンなんていうのは、最近は皆無だった。こういうテストマッチが入ったことで試せたこと。そしてそれが得点につながったというのはよかった」

「試したいこと」。それは本田の口からは、明確な言葉で表現はされなかった。しかし丁寧に彼のプレーを辿っていけば、それは自ずと浮かび上がってくる。

「付け加えたプレーというのは、まさにそこやね」

 本田に直接聞いてみた。

「サイドの位置ではスピードを生かすような、パスの“受け手”としての役割ばかりを要求されてきた。ただ、自分の特長を出すためにはそれでは厳しい。だから、サイドにいながら“出し手”にもなるアプローチをしたのでは」

 彼の答えは、シンプルだった。

「自分が意識して付け加えたプレーというのは、まさにそこやね」

 豪州での成功体験を経て、本田が敢行した今回のトライ。「プレーが鈍重」という評価は、正直今に始まったことではない。そうした見た目だけの評価よりも、彼が示した存在意義は、非常に興味深かった。

 ハリルホジッチ監督の本田評、さらにはサウジアラビア戦に向けた準備段階の情報も相まって、本田が先発から外れる公算は高まっていった。オマーン戦翌日の取材でも、指揮官の評価と本田の感触の間にある齟齬を問われ、彼自身も「ギャップは感じている」と話していた。

【次ページ】 “出し手”としての本田はやはり稀有な才能である。

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